120810 渋谷ユーロスペース CORACOES SUJOS ブラジル映画 [監]ヴィセンテ・アモリン ブラジル映画で、スタッフは音楽以外全員ブラジル人だが、逆にキャストはほぼ全員が日本人俳優たちという異色作。
⬆かなり衝撃的なポスターである。特にこの国賊という漢字が重要な意味を持つことに。
第二次大戦直後のブラジル、サンパウロの日系社会が舞台。いわゆる勝ち組と負け組の抗争がテーマ。この作品はフィクションだが、こうした抗争があったのは事実である。
写真館を営むタカハシ(伊原毅)、愛妻で教員をしているミユキ(常盤貴子)とつましくも平和な生活を営んでいる。日本人コミュニティーでも人望がある方だ。
そんな中、陸軍大佐と称するワタナベが日本は断じて負けていないし、負けたと思うものは汚れた心を持つ国賊である旨、コミュニティーで力説。そして、呼び出したタカハシに軍刀を渡して、負け組の主要人物を誅殺せよと迫る。
日本が勝ったとする話には半信半疑ながらも、ワタナベに命じられたままに、日本人会会長であるササキまでも殺傷に及ぶ。絶望したササキの妻(余貴美子)子、更に亭主の蛮行に心に深い傷を負ったミユキまでもが、土地を離れ日本に向かうのだった。
その後、徐々にもたらされる日本の敗戦情報で、タカハシのワタナベに対する疑惑が深まると、先手を打って刺客を送られ、辛くもこれをかわしたタカハシはワタナベを追い詰め討ち果たす。
官憲の元へ出頭するタカハシ、自決はせず、贖罪の道を選ぶ。それから数十年、すっかりごま塩頭に変貌したタカハシ、一人で写真館を続けている。そこへ日本人女性が現れる。嘗て可愛がっていたササキの一人娘アケミであった。
見ているうちに「日本の一番長い日」を思い出した。伊原は好演。常盤も、難しい役を見事に演じた。奥田瑛二も既に62歳、渋みが出て、この狂気の大佐の役ははまり役だ。
ブラジル人がこういう日本人にしか分からないような話をうまく映画化したものと思う。ただ、タカハシが何故唯々諾々とワタナベに言われるがままに、狂気の片棒をかつぐようなまねをしたのか、些か理解しにくい。もう少し丁寧な描き方ができなかったか。
#54 画像はALLCINEMA on line