120924 TOHOシネマズ川崎 もっと前に見たかった作品だが、海外旅行で出遅れた。
これは高倉 健の映画だ。彼に余り興味のない人間はさして深い感動を覚えないかも知れない。よくあるロードムービー仕立て。亡き妻の遺言で、彼女の故郷、平戸の海へ遺灰を撒く為に、富山から長崎まで特別仕様のSUVで移動。途中で出会う人々との交流を経て、いくつかドラマが生まれるという趣向。
⬆こういう格好は不思議によく似合う人だ。これは刑務官だが、ぽっぽ屋にも共通する。だが、81歳だから、さすがに歩く姿に老いがにじむ。髪の量には嫉妬を感じるほど。
互いに前半生を終えてから、出会い一緒になった二人。田中裕子、いい味、出している。二人の間になかなかよい雰囲気が漂う。いいキャスティングだ。
旅に出て、最初に遭遇する車上荒らし。似たような境遇(作り話)で、親近感を抱く。演じるタケシ、才人だが、演技は下手くそ。映画は作る側がいい。
とにかく、やたら出演者は多彩だ。それと映像が美しい。但馬の竹田城跡が雲海に囲まれているシーン、そして、とりわけ遺灰を撒いた後に、港へ帰る途中の大きな夕陽を背景に船影が横切る見事なショット。台風のシーンを含め、撮影は相当苦労したろう。
亡き妻が残したはがき、一枚は富山で受け取るが、2枚目は彼女の生まれ故郷の郵便局局留め、しかも日時指定まで。いぶかるものの、実行するしかない。この謎めいた展開も、やがて彼自身の心のもやもやと共に氷解する時が来る。この辺りの筋立て、まことに見事だ。
これを見ながら思い出したのは春にみた「星の旅人」。スペインを舞台にしたハリウッド作品。サンチャゴ・デ・コンポステーラ巡礼の途中、心臓発作で落命した息子の遺志を継ぐような形で、急遽アメリカから駆けつけた父(マーティン・シーン)が、途中さまざまな国からの巡礼者と交流しながら、目的地に達し、更に海岸へ出て、息子の遺灰を海へ流すという話。
#63 画像はALLCINEMA on line