120925 新宿ピカデリー
時間調整で見た作品だったが、見事な作品で、なにやら得した気分。
最初は「計画」に乗り気だった男も、徐々に他人の良心を踏みにじり続けることに耐えられなくなる。一方、女の方は、男に結婚詐欺を重ねさせるごとに、感情がエスカレート。男に対して、詐欺の「振り付け」まで始める始末。とめどない暴走ぶりに、男はためらいつつも、女を止められない。そうして、ついに新しい店舗を構える準備に入るのだったが・・・。女が愛したのは男だったのか、それとも
やっと持った自分の小料理屋、繁盛の最中に自家出火で全焼してしまう。ほとんどつかみかかった二人の幸せが、一夜にして遠ざかって行く。絶望に打ち拉がれて、茫然自失。しかし、女は強いのだ。ためらう男の尻をひっぱたき、「計画」を実行に移す。
男の優しさ、弱さ、女の執念、強さの対比が面白いほど、うまく描かれている。
この女、実に難しい役どころだが、松たか子が見事な演技を見せる。心の内面を目だけで表現したり、ほんとに大女優の片鱗を十分感じさせてくれて、ファンにはたまらない。
また、他人（ひと）を騙しているのに、相手にまったく気付かれないほどの演技が自然に出来てしまう、母性を思いっきりくすぐる天才的な男を、目元に奇妙な雰囲気を漂わす阿部サダヲが、これまた巧いこと演じる。この配役が、見事！
この西川美和という監督の手腕に驚く。しかも、原作、脚本もこなしているから、まさに才人だ。更に美形ときているから、才色兼備を恣にという感じ。まだ38歳で、既に10本近い作品を残していて、「ゆれる」や「ディア・ドクター」など、優秀作もある。
「もがりの森」の川瀬直美（44）、「ヘルタースケルター」の蜷川実花（39）、「エンディングノート」の砂田麻美（34）など、若手女流監督の台頭が目覚ましいのは、まことに喜ばしい。
#64 画像はALLCINEMA on line
