130827 ルロイ・アンダースンの「FORGOTTEN DREAMS」の、少し哀愁を帯びたBGMが、ひときわ懐かしさを際立たせる。時代は1950年代、舞台はBASSE-NORMANDIE(カマンベールの故郷)だ。地元の保険会社の秘書募集に飛びついた主人公のローズ(デボラ・フランソワ)は、ちっぽけな雑貨屋の娘。店のショーウィンドウに置かれていた一台のタイプライターが自分の人生を変えるキーになるとは!
雇い主のルイ(ロマン・デュリス)、一風変わった二代目で、彼女のタイプの腕に賭けようとして採用。一本指打法から10本指に変えさせただけでなく、地元の早打ち大会に優勝させようと、自宅に住まわせて特訓。その甲斐あって、全仏、更に世界大会で優勝するまでを、ユーモラスに、時に感動的に描く。他に「アーティスト」のベレニス・ベジョが端役で出演。
冒頭から、50年代の雰囲気全開の色彩溢れるタイトル・デザイン、クレジット・ロールにたちまち引き込まれる。久しぶりのわくわく感だ。
全仏大会優勝までは分かるが、世界選手権で優勝は、ちょっとばっかしリアリティーに欠けるかな。やはりタイプの世界はアメリカでせうが。それに、もっと言えば、フランス語にはアクセント記号が何種類もあり、それらを含めての打法に慣れていたのが、急に英語式に打つというのは、かなりのハンディである筈でね。しかも、ポピュレール社は、QWERTY方式ではなく、フランス語により適したキー配列の新商品を宣伝していたから、彼女もこれを使用していた筈。
このデボラ・フランソワというベルギー出身の女優、それほどの美形でもないし、演技力も凡庸だが、この役にはピッタリの雰囲気を持っている。「譜めくりの女」(2006)に出演してたのだが、思い出せなかった。ということは、余り印象が深くなかったということかな。
監督のレジ・ロワンサール、これが初の長編作品らしいが、なかなかの手腕。88888!! Auguri!! フランスでは、この作品を例のロッキーになぞらえる批評家も。
因に、原題のPopulaireは、フランスのタイプライター製造会社。(実在したのかどうか不明。)この企業の販促の一環で、優秀なタイピストを支援。当然、全仏優勝者のローズもこの会社の支援を受けて世界大会に出場を果たすのだが、その会社幹部の制止を振り切って、何と決勝戦の大舞台で、自分の運命を決した、自宅にあったあの古いタイプに機種変するという挙に出る。
それは彼女の誕生日に父親がプレゼントしたものだったからだ。だが、余りの高速打法にキーがついていけず、からまるという珍事を乗り越えて、ついに世界チャンピオンに。(多分10秒はロスしたと思うのだが、それでも優勝?!)決勝戦での「珍事」を見たルイは、何とキーでは高速打法は無理、これからはボール式だと思いつく辺り、なかなかの商売人というオマケが付く。(後にIMBがタイプボールとして製品化)
#69 画像はIMbdとALLCINEMA on line