140627 原題:GLI EQUILIBRISTI (直訳:バランスを取る人たち)英文はBALANCING ACT 昨年のイタリア映画祭参加作品。今頃上映するとは!その時の仮の邦題は「綱渡り」どちらの邦題がいいのかビミョー。要するに、幸せを取り戻せるか、ギリギリの線上にいる人々ということだろう。つまり、この家族のことだ。
脚本・監督:イヴァーノ・デ・マッテーオ 出演:ヴァレーリオ・マスタンドレーア、バルボラ・ボブローヴァ(上品な美形、スロヴァキア人だが、イタリア語は完璧)
またここにも幸せそうな一家が。場所はローマ。市役所勤務のジュリオ(マスタンドレーア)、妻エレーナ(ボブローヴァ)、高校生のカミッラ、小学校低学年のルーカの4人。
この家族もまた崩壊の危機にひんしている。原因はジュリオの浮気。相手に発信したメールをエレーナに読まれたしまったのだ。以来、ジュリオのやることなすこと、いちいち気に入らない。イライラする日々だ。だが、子供の手前、平静を装うとするが、子どもたちはとっくに両親の危機に気付いている。
間違えて配送されたピッツァだのに、配送員に同情して、そのまま引き取ってしまう、そういう優しさにも腹を立てるエレーナ。「ばっかじゃないの、こんなに取って。アタシがダイエットしているの、知っているくせに!」
ジュリオはある決断をする。それも、泊まるところぐらい何とかなるし、公務員としての仕事もそのままあるんだからと割に軽い気持ちで。そう、いずれエレーナも許してくれる筈に違いない・・・。
だが、事態はそうはならない。元々役場の一介のスタッフに過ぎないから、何かと費用がかかり始める子どもたちの学費やお小遣いさえろくに工面できなくなってくる。泊まるところも、友人たちが何とかしてくれるだろうと思っていたのが、とんだ見当違い。ついには車上生活にまで落ちぶれて行くジュリオ。
子どもたち、特にお父さん子で感受性豊かな年頃のカミッラには、耐えがたい。恋人も紹介し、クリスマスにはお父さんを自宅に「招待」して、お母さん、恋人とひと時の幸せをと思っていたのに、来るには来たが一言も口を聞かず、お手製のケーキを一口食べただけで出て行ってしまう父。
「お父さん、一体どうしちゃったのよ」と、つい詰問調になってしまうカミッラ。お父さんが大好きだから、心配でしようがないのだ。
見ているうちに、どんどん気分が落ち込んで堪え難いほどの展開。やっとケータイに出たジュリオの一言、「プロント!」と、微かな笑顔がなければ、余程後味の悪い作品になっただろう。
ツッコミどころは結構あって、路上生活にまで落ちて行っても車を手放さないのは?売れば結構まとまった生活費が入ったろうに。ガソリン代はどうやって工面?ルーカが友達と遊ぶ遊園地の乗り物代も出してやれないというのに。エレーナは何故そこまでジュリオを突き放すのかも、理解に苦しむ。
とうとうジュリオの車を見つけたエレーナとカミッラ。でも、お父さんの姿はいずこに?
夜のローマをエレーナとカミッラがバイクに二人乗りして探しまわるのに、最後にケータイに出るのって???最初からケータイにかけていれば、問題なかったのではないか、その他いろいろ・・・。脚本、もう一工夫して欲しかったなぁ。
マスタンドレーアは、現在42歳で、国内で上々の人気を誇る中堅役者。文筆家でもある。これまでは割とさっそうとした役柄が多かったが、本作では、むさ苦しいヒゲを生やし、目力の乏しい、寂しい後ろ姿が印象的な冴えない男を好演。
#54 画像はALLCINEMA on lineから