ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「金日成のパレード」と「北朝鮮・素顔の人々」

141213 原題:DEFILADA (行進)86分 ポーランド 日本公開は1991年。監督・脚本:アンジェイ・フィディック ポーランドのテレビ局が1988年9月に行われた北朝鮮建国記念日のパレードをそのまま忠実に撮影したもの。

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これでもか、これでもかと見せられても、単なるプロパガンダ映像にしか見えず、さすがに90分は途中で飽きる。88年ということは、丁度ソウルオリンピック開催時でもあり、大いに意識して力み返っている様子がよく分かる。また1年後にベルリンの壁崩壊で、一気に東側諸国が民主化の波に襲われることを思うと、極めて象徴的で、かつ滑稽である。

ポーランドの名匠、アンジェイ・ワイダは「スターリン主義体験者にはゾッとする感想を禁じ得ない」、「今まで見たポーランド映画で最も面白く、素晴らしいものの一つだ」そうで、そうした経験のない者にはそれほどの感慨は抱きようがない。ただ淡々と目の前に繰り広げられる、途方もないショーを見せられるだけ。

#99

続いて上映された「北朝鮮・素顔の人々」は、全編隠し撮りで作られた作品。これまでテレビ番組でも見たことのあるような光景が映し出される。「パレード」とは逆に、北朝鮮の裏側、真実の庶民の暮らしの一部を見せつける。見ていてちょっと辛い場面も。

電車が停電で停止している間に、水売りから洗面器一杯25円ぐらいで水を買って、何もない駅前広場で洗顔したり髪を洗う人たち。これらは住民でなく、旅行者だそうだ。そして電気がつくと汽笛を鳴らして、乗客たちは電車に戻っていくという。

一方、駅近くのゴミ捨て場にはコッチェビと呼ばれる浮浪少年たちの群れ。乗客が捨てた食べ物を仲間で分け合って食べている光景が、実に切ない。少々腐っていても意に介さない。特別な免疫が備わっているというナレーション。また、列車の乗客たちに向かって歌を歌い食べ物をもらう姿が哀れだ。

極め付けは公開処刑の場面。その辺の住民は強制的に動員されるらしい。処刑される人物の家族は最前列に座らされるというむごたらしさ。処刑シーンはほとんどまともに映っていない。そりゃそうだろう。命がけの隠し撮りだから。見つかれば撮影者はそれこそ公開処刑されてしまうのだ。たった30分の短編だが、こちらの方が圧倒的にインパクトがある。

#100

終映後、NPO北朝鮮難民救援基金」加藤博事務局長のトークショーが30分ほど。脱北の現状などについて、話された。簡単な質疑応答があって、終了。

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右が加藤博氏。