160331
いよいよ会期も残り少なくなったので、勤務の後、東京駅途中下車で、見てきた。20世紀で、最も重要な画家の一人とされるジョルジョ・モランディだが、日本ではそれほど知られていない。それは作品が、かなり偏ったものから来るのだろう。
今回展示の作品も、そのほとんどが静物で、しかも対象物は瓶とか壺とか、日常の品々を並び替えては、繰り返し描いている、どちらかといえば風変わりと言っていいような画風である。色調も、グレー、ベージュ、黄土色のみ。エッチングも多様なハッチング(斜めに細い線を重ねる手法)を駆使した小品が多い。
1890-1964の74年間のほとんどを生地のボローニャ(Via Fondanza, Bologna)で過ごした。ヴェネツィアやローマには、重要な展覧会があると、何度か出かけてはいるが、イタリアから国外に出たのは、なんと66歳の時で、しかもボローニャからも遠くないスイスというから、ほぼ引き篭もりのようなもの。
母と3人の妹と暮らし、独身を通したようだから、かなり変わり種と言われても仕方ない。しかも190cm以上の長身というから、イタリア人にしては突出した上背ということになる。
そんな男がひたすら同じような静物ばかり描いていたわけだ。若い頃に、形而上絵画を得意としたジョルジョ・デ・キリコに触発されて、似たような作品を試作していたようだが、むしろ彼に大きな影響を与えたのは、セザンヌだろう。究極の絵画論、円柱、円錐、球形に収斂するという理論に深く共鳴したらしい。
そういえば、今回展示されている6点ほどの風景画にも、その実践らしい形跡が見られる。
章立ては、
I. 変奏のはじまり
II. 溝に差す影
III. ひしめく器 ー 都市のように
IV. 逆さのじょうご
V. 矩形のコンポジション
VI. 多様なハッチング
VII.ペルシャの扁壺(ヘンコ)
VIII.縞模様の効果
IX. 終わりなき変奏
X. 風景の量感
XI. ふるえる花弁