ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

創作オペラ「セヴィリアの理髪師の結婚」

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タイトルから分かるように、二つの名作オペラをくっつけちまった、奇天烈な創作オペラ!上のチラシにもある構成・演出:田尾下 哲/家田 淳の仕業である。

もともと、ストーリーの展開は「セヴィリア・・・」があって、その続きが「フィガロの・・・」なのだから、いずれ誰かが考えるだろうと思へば、それほど突拍子もないものでもないが、いざやるとなると、相当な決断が必要だろうことは想像に難くない。なんたって天下のモーツァルトさんとロッシーニさんに失礼に当たりはしないだろうかって、考えるよね、普通は。

ちなみに、フィガロの初演は1786年、セヴィリアはちょうど30年後の1816年と、ストーリーの展開とは逆になっている。本公演では、セヴィリアの3年後がフィガロという設定。

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⬆︎武道館付近の行列。まだ最後尾が見えない。

多大なる興味を持って観に行きましたよ。その前にミューザ川崎でコンサートが入っていたのだが、こっちの演目の方が気になって、前座だけで出てきてしまった。その上、日テレの24時間テレビの会場が近くの武道館なので混雑が予想されるなどという情報も入ってきており、早め早めに会場へ。案外スムーズに言って、もらった整理券番号は72は上出来。

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「セヴィリア・・・」のおかげで、楽しみにいていた「マラ5」は結局、聞き損なった。

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またこの豪華絢爛たる出演者陣はどうだろう!できれば両方見たいところだったが、毎回こんなこと言いつつも同じ演目を両組とも見た経験、一度もなし。我ながら、ケチ。

二つのオペラをくっつけるというのは、ガラガラポンとは行かないから、最初はフィガロ、次に、ハイ、セヴィリア、それから再び、フィガロで、また次にセヴィリア。んで、最後はフィガロという具合で、どちらかと言うと、やはりモーツァルト比重が重かったかな。

ま、それにしても、ごく自然にストーリーも展開して行くし、さすがに見事な構成と演出だ。驚きました。ただ、観る側、聴く側に両方のオペラの情報がきっちり入っていないと、訳、分かんなくなるだろう。

中で、一番美味しいところを持って言っちゃったのは紛れもなく嘉目真木子!いいアリアを独り占めの観、たっぷり。それでも、皆さん、それぞれ大善戦!終わってみれば、大喝采のブラヴィッシミでありました。

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ああ、それから初めて聞いたバスの森 雅史の低音の響きには、ちょっと惚れましたね。なかなかあのような響きを出せる人、多くないから。

終演後、混み合うロビーに、出演者が全員お出ましになり、大サービス。ここぞとばかり撮りまくりました。

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左、美しい高音で会場を魅了したリンドーロ/アルマヴィーヴァ伯爵役の山本康寛と、右はバルトロの三戸大久。この人の威圧感と迫力は日本人離れしている。

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どうですか、このお姿!でも、10年近くずーっとフォローしているが、少しばかり貫禄も備わってきた。以前はスザンナの方が適役だったが、今日はロジーナ/伯爵夫人。

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日本オペラ界随一の細身長身、手足の長さはハンパない。それを折りたたむような演技が凄かった!こんなケルビーノができるのは青木エマしかいない。姿ばかりが話題になりがちだが、もちろん本業の歌唱の方もずば抜けている。だいぶ後ろに下がったのだが、それでも全身が収まりきらない。

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マルチェッリーナのイヌッチョこと磯地美樹、少し痩せたんじゃない?と言ったら、変顔で返された。安定感ある演唱、さすがです。

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フィガロの方の伯爵を演じた、ベテランの与那城 敬。伯爵にふさわしい気品を備えたバリトン。今宵も存在感、たっぷり見せつけた。失礼ながら、この童顔だから、やはりスカルピアなどは、ちょっとね。よほど特殊メイクでも施さないことには、トスカに手玉に取られそうだ。

#51 (文中敬称略)