170901
日声協主催の独演コンサートシリーズ、今年度の第5回は、バリトンの青山 貴。歌唱力もさることながら、この方の自然で、人柄を感じさせる温もりのある笑顔に惹きつけられるファンが多い(特に高齢女性)。
ご本人からも最後に説明があったが、このシリーズ初登場で、何を歌うか悩まれたそうだが、普段歌いたいと思いつつなかなか機会がなかった演目を並べたという。特に季節柄、海をテーマにしたという。少しでも聴衆を涼しい気持ちになってもらうつもりだったのに、この日、一気に涼しくなり、目論見が外れたと笑っていた。
普段歌えないからと、ここにぶつけてくる出演者は、やはり結構多い。そういうファンが来ることを想定した上での決断だろう。それはそれでいいことと思うのだが、ある程度、登場する歌手を聞き込んでないと、時に歌う側と聞く側に微妙なズレが生じるような気がする。
この点、今回ほとんど初めて聞く演目ばかりだったが、それなりに聞き応えを感じ、楽しめたのは、自分なりに事前に彼の歌唱情報が入っていたお陰だと思っている。こちらが”初めて聞く”のは当然で、ご本人曰く、「最後の演目以外は初めて歌うものばかりです」と明かされていた。道理で譜面台を立ててたわけだ。(最後の2曲だけは、多少の振りも入るし、譜面台は撤去されたが)
アンコールは「鉾を収めて」(中山晋平)。こうしたクラシックのコンサートで手拍子を初めて聞いた。
いかにも実直な青山らしい演目解説文だ。いずれも彼の持ち味である中・高音を響かせる演目が並ぶ。とりわけ最後の2曲はトリハダもの。手狭なコンサートサロンではもったいないと感じる歌いっぷりで、場内、大歓声。ピアノの高田絢子も彼の伴奏をする機会が多いだけに、しっかり分をわきまえた、見事な黒子ぶり。
#53 (本文中、敬称略)