191019
昨年の「ナブッコ」に続いて、アーリドラーテ歌劇団の本公演を観に行った。「マクベス」は、ヴェルディが1839年から54年間に亘り28作のオペラを作曲していて、本作は10作目というから、「ナブッコ」、「エルナーニ」と並ぶ前期の傑作ということになるだろう。
今回も低予算でよく頑張っている。オケも合唱も実に立派である。合唱団員にはプロの方々もかなり加わっていることもあり、うまさは特筆に値する。
こういう本格派オペラは舞台装置に予算を多く取られがちだが、よく工夫されていて、今回も大いに感心した。8m X 10mほどのボードを天井から吊るし、状況によりさまざま角度を変えたり、床面に立てて背景として使うなど、うまく案出したものだ。
加えて、照明が素晴らしい効果を生んで入る。照明の名手はその名も照井さんとおっしゃるから、覚えてしまった。終幕でマクベス軍がバーナムの森が動いたことで動揺、マルコム(マクベスが謀殺したダンカン王の遺児)軍に破れるところも、そのボードの裏でチャンチャンとやったことにするのだが、それも特に違和感も覚えず。
ソリスト陣、タイトルロールの清水良一が体調不良で、不発。レイディー・マクベスの斎藤紀子は以前にもなんどか聞いているが、さすがになかなかの巧者で、声もすばらしい。最高音域に達すると、時に絶叫風に聞こえてしまうところが惜しい。
マクダフを歌った青栁素晴は、なんども拙ブログで書いて入るので、詳しいことは省くが、本作では一番いいアリア(と愚亭が勝手に信じている)O, FIGLI MIEIを見事に歌い一番大きな喝采を浴びていた。
バンクォー役のベテラン、志村文彦、相変わらず素晴らしい低音を響かせてくれ、忘れがたい印象を残した。
モダンバレエが十数分、素晴らしい演技を見せてくれたのも収穫。他に、魔女たちも歌唱も演技も見応え、聞き応えたっぷりであり、また魔女の中には合唱にも登場する歌手たちがかなりいて、楽屋での衣装早着替えに追われて大変だったろうと想像する。
字幕について、一言。舞台に明るい照明が当たると、かなり見えにくくなるのは、なにか一工夫してほしいところ。
蛇足だが、このオケでチンバッソが使用された。バストロンボーンより下を受け持つ楽器で、ロータリーバルブ方式なので通常のトロンボーンとは吹き方が異なる。狭いオケピット向き。マウスピースはチューバと同じものを使用する。日本で見かける機会は少ないと言われている。
#64 文中敬称略