200711
4ヶ月も演奏会を聞かなかったことって、もう思い出せないほど、はるか昔のことのよう。それだけに、小柄なマエストラが下手袖から姿を現した瞬間は感動的。沖澤のどかは、ブザンソン優勝者として一躍名を馳せたが、小柄童顔ゆえか、歩き方はかなり工夫しているようで、大股で堂々たる印象。(大変失礼だが、欧米ではまだ年端も行かない少女と映ること、間違いない)
今日は初めてのことがいくつか。まず高輪ゲートウェイに停車したこと。つまり、京浜東北線に乗るのも4ヶ月ぶりという次第。そして到着した上野で、いつものように階段を上り切って左側に移動しようとすると、見慣れぬ光景!一瞬焦った。表示に従って、さらに前方に移動。凡そ20mほど鶯谷寄りに新しい公園口が。
なにやら上階には飲食店やらショップがいろいろできている様子。それにしても、これまでは改札口を出ればそこは東京文化会館という絶好の立地だったのに、ちょっと残念!
オペラ「フィデリオ」は二期会にとっては、ベートーベン・イヤーの目玉ゆえに、冒頭に今日のコンサートのタイトルになっているこのアリアを持ってきたのは、至極分かりやすい。すでにベテランの域の木下美穂子が情感たっぷりに歌い上げる。
城宏憲は、今更だから言及をあえて避けるが、2分程度のこのアリアで終わらせるにはあまりにもったいない。なにかもう少しどっしりしたアリアを歌わせてあげたかったなぁ。今日、一番びっくりしたのは中島郁子。UNA VOCE POCO FAは、途中からアジリタが始まり、軽快な歌唱技術も求められるし、決して侮れないアリアだが、それを軽々と歌ってしまって、進化ぶりを発揮していた。
続けて同じ「理髪師」から、これまた七面倒臭い「わたしは街の何でも屋」、名手黒田 博が見事なテクニックを披露、バリトンでもテノール気味の高音が何ヶ所か出てくるのだが、彼は上のドまで出せるといつか本人から聞いていたぐらいだから、朝飯前の屁の河童である。
25分の休憩時間にロビーをうろうろしていたが、久しぶりの公演にしては、あまり知る顔が多くなかったのはやや意外だった。
後半、我が国のバス第一人者妻屋秀和が登場。なんと長髪を後ろのなびかせている。日本人離れした容貌・体躯で、また一段とマエストラが小さく見える。超低音を朗々と響かせて風のように去っていった。
本来であれば、まさに今日上演されていたはずの、これまた二期会の今年の目玉となるはずだった「ルル」である。下手から森谷真理、そして上手からダンサーの中村 蓉が同時に登場。舞台前方に白い椅子が二つ並べられていて、これを小道具にして演技。中村のダンスは実に激しいモダンダンスで、森谷には申し訳ないのだが、神経は中村に集中。途中から、着ていた白い衣装を脱ぎ捨てるという意表を突く激しさだ。
最後は、大御所、福井 敬がNESSUN DORMAで締め括り、アンコールはなし。後ろでおばさん二人が「アンコール、絶対やるわよね、まだ時間あるし」とか聞こえてきたが、残念でした。
#11 文中敬称略