210226 POLYTECHNIQUE (工科大学)カナダ 2009 77分 脚本・監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ(「灼熱の魂」'10、「複製された男」'13、「ボーダーライン」'15、「ブレードランナー2049」'17)
1989年末にモントリオール工科大学で実際にあった銃撃事件を、一部脚色をして映像化。犯人(マキシム・ゴデット)がフェミニストを極端に憎悪し、フェミストにより自分の人生が狂ったという勝手な妄想で、ミソジニー(女性蔑視)に陥り、女子大生のみをターゲットに銃撃した末、自殺するというなんとも凄惨な内容。それだけに、全編モノクロで撮影した効果が大きい。
途中、校内の一遇にかけてあるピカソの「ゲルニカ」の白黒画像が画面いっぱいに広がるのも考えられた手法。全体にカメラアングルにさまざま工夫が見られる。廊下が上下逆さに移動していくラストシーンも印象に残る。事件当時、ケータイがまだ一般的でなかったこともあったにせよ、気づいた男子学生が管理室に知らせたにもかかわらず、警察の出動が遅れたため犠牲者が増えてしまったのは大きな失態だろう。
犯人がなぜそのような思考に至ったかについては語られていないのがちょっと弱いかな。また銃撃後、倒れた女性大生を救おうと一人奔走・奮闘する男子学生、ジャン=フランソワ(セバスチャン・ユベルドー)が、自分の無力を恥じたのか、母親に会いに行った後、車内にエグゾーストパイプを引き込み自殺するというのは、いささか無理があるように感じる。
辛くも生き延びたヴァレリー(カリーヌ・ヴァナス)、事件前に航空機製造メーカーの入社試験を無事に通るものの、「女性は妊娠するからなぁ」と試験官に言われ、合格の喜びより屈辱感を味わう。入社後、結局は妊娠し仕事を断念するような表情をみせつつも、「もし男の子なら愛を教え、女の子なら世界にはばたけと教える」というセリフに救いが。