ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「私は告白する」@BSP

210730 I CONFESS 米 1953年、95分、監督:アルフレッド・ヒッチコック

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冒頭、いきなりヒッチコックが坂の上を横切ります。

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⬆︎にもわざわざ紹介されていますが、撮影はカナダのケベックです。白黒作品なのにカラフルなケベック、と入れているところが面白いです。ヒッチコックの作品では大変珍しいことのようです。フランス語圏のケベックなので、時折、とってつけたようにフランス語が混じります。1953年の作品ですが、リアルタイムで見た覚えはありません。今回が初見になります。

殺人容疑で告発された神父ローガン(モンゴメリー・クリフト)が主人公です。

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冒頭に近い部分で、殺人現場から足早に立ち去る神父姿の男の後ろ姿が。

神父が昔の恋人ルース(アン・バクスター)との密会の後、自宅に戻ります。窓から隣の礼拝堂の前に人影が。急いで礼拝堂に入ると、夫婦で教会で働いているケラーの姿が。なにやらいわくありげな表情。今から告解をしたいと言い出します。

時代が遡って、若い日のローガン、恋人と辛い別れをして欧州戦線へと向かいます。数年後、故郷に生還を果たしますが、実はルースは職場の雇用主ピエールと結婚しているのですが、ローガンは知りません。

やっと再会できた喜びで有頂天の二人、ある日、郊外へ。帰りのフェリーを逃した二人に突然の雷雨。びしょぬれになりながらも、やっと雨宿りできた四阿で、夜明かし。翌朝は快晴。そこへ、この邸宅の持ち主ヴィレットが現れ、ローガンと口論に。相手はルースの知り合いでした。同時に、ローガンにルースが結婚していることが判明します。この後、二人は距離を置くのですが・・・。

不倫の現場を目の当たりにしたヴィレット、この後、なんどかルースをゆすり続けます。このヴィレットの庭師の仕事もしていたのが教会でも働いていた、冒頭部分に登場するケラー。東欧からの難民らしく、ローガンには住まいや仕事まで紹介され大恩にあずかる身、それが・・・神父は告解を漏らしてはならないという教義を巧妙に利用するのです。

ということで、なかなか重層的なプロットなのですが、わかりやすいのです。脚本(ジョージ・タボリ)が上手いのでしょう。そして、ヒッチコックの撮影が冴えます。白黒作品ゆえの見事なアングルが多数出てきます。

面白かったのは、神父が殺人犯にされると観念し、街を歩き続ける場面で映画館の前を通り過ぎようとすると、そこにはハンフリー・ボガート主演の「脅迫者」(The Enforcer, 1951)がかかっていて警察に追われる男のスチール写真が。我が身を重ねて戦慄するのです。

神父が殺人犯で有罪かどうかが、後半の焦点となります。「十二人の怒れる男」('57 シドニー・ルメット)を彷彿とさせる陪審員の審議のシーンがあります。そこでは、有罪をほのめかすかのように描かれ、「もしかして?」と思わせます。この辺りもうまいです。

やや意外なラストでしたが、まあまあ納得です。

本作のモンゴメリー・クリフトも素晴らしいです。彼の出演作はほとんど見ていますが、「赤い河」のような西部劇はあまり彼本来の味が出ませんから、現代劇にいいのが多いですね。「女相続人」、「陽のあたる場所」、「終着駅」、「地上より永遠に」、「若き獅子たち」、数少ないカラー作品「愛情の花咲く樹」でエリザベス・テイラーと共演、結構いい仲になったのが仇、交通事故で顔を損傷、なんとか修復できたようですが、その後、不調で、45歳で亡くなったのが残念です。常に誠心誠意で、一途に思い詰めるような、どこか純粋無垢な印象をまとった数少ない俳優でしょうか。ま、それだけ不器用とも言えますが。

一方のアン・バクスター、本作の3年前に撮った「イブの総て」の印象が強いです。冷静沈着、計算高い怜悧なタイプで、きれいはきれいですが、どこかいつも冷めていて、愚亭などはあまり好むタイプではありません。役どころもそういうものが多いようです。