ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「ナポレオン」

231206 NAPOLEON 2023  米  2h38m 製作・監督:リドリー・スコット

ナポレオンがタイトルに付く作品、数知れず、多分その何本かは愚亭も見ていますが、これは原題、邦題共にナポレオンの一言ですし、確かにそれに相応しい内容になっていると思います。リドリー・スコットは、相当長期に渡って本企画を温めていた気配です。

そんな中では、主役に誰を据えるか、ここがいちばんのポイントだったでしょう。ホワキン・フェニックスは2000年公開の「グラディエーター」以来の起用で、一応成功しています。フェニックスは「ウォーク・ザ・ライン」(2005)で、歌手、ジョニー・キャッシュを演じて、実際に歌も歌うし演技のも圧倒されて、彼の俳優としての本領はよく分かります。

ナポレオンていうのは、ある種、かなりの奇人・変人だったようで、もちろんその前に軍事の天才でもあるわけですが、この辺りの振幅の激しさを演じ分けられるのには、まさにピッタリのキャスティングと言えそうです。ただ、間もなく50歳ですから、冒頭のツゥーロンでの大活躍は弱冠24歳のナポレオンとなると、多少不自然さは感じざるを得ないのですが、ま、そこは措いておきましょう。

いきなりマリー・アントワネットの斬首シーンが出てきたのにはさすがに驚きました。先日もたけしの「首」を見たばかりで、またもやスプラッシュ!生首を高く持ち上げて見物の人民に見せるシーンは、ちょっとねぇ〜。

刑場(コンコルド広場のはずですが、本作ではチュイルリー宮殿の中庭になっていました)に引かれていく場面を群衆の中でスケッチしたのがジャック=ルイ・ダヴィッドですが、後年、あのルーブル所蔵の超大作「ナポレオンの戴冠」を描いていますし、その場面も本作に登場します。

この絵のままの描写も見応えあります。

さて、前半、彼が驚異的な昇進を重ねていくところが、史実に基づき忠実に再現されていきます。一方で、ジョセフィーヌヴァネッサ・カービーが実に色っぽく熱演)によろめき、結婚まで突き進んでしまうナポレオンの異常とも言える恋への”落ち方”が描かれます。

後半の見せ場の最たるものは、やはりアウステルリッツですかね。これまでのあの時代の壮大な野戦描写を全部上書きするが如く、SFX/CGを総動員しての迫力にはほとほと圧倒されました。

14台のカメラを同時に回しっぱなしにしたということですから、一応、何万とも言えるエキストラは登場させたようです。ロケはマルタが使われたようでした。中でもすさまじかったのは、氷結したザッチェン湖上の敵兵に対して大砲をぶっ放して氷を粉砕、人馬もろとも沈めてしまう場面。

やはりこういう作品は映画館の大画面で見ないと興味半減しますね。その後、エルバ島に流され、脱出後、ワーテルローの大会戦でウェリントン軍に負け、セント・ヘレナに流され、そこで亡くなるまでを、もろもろ逸話を絡ませながら丁寧に描いていきます。

死因は胃潰瘍・胃癌、あるいはヒ素による毒殺説など、いろいろ。最後はナポレオンの食事中の後ろ姿がゆっくりと左へ傾いて・・・。いやあ、見応え120%!!

コロナ禍での撮影だったため、エンドクレジットでのコロナ対策のためのスタッフの数が半端なかったです。