ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

小劇場で観る「アンナ・ボレーナ」@内幸町ホール

240216 生で観る初めてのオペラです。ヘンリー8世の2番目の妻、アン・ブーリンの話をガエターノ・ドニゼッティがオペラ化した作品です。英国史上、よく知られた血塗られた1ページで、戯曲や映画化もされています。

私が見たのは1969年のお「1000日のアン」(リチャー・バートン、ジュヌヴィエーブ・ビジョルド)と2008年の「ブーリン家の姉妹」(ナタリー・ポートマンスカーレット・ヨハンソン)です。

オペラとしては、2011年にMETライブビューイングで見ました(アンナ役はアンナ・ネトレプコ)し、アリアだけなら、なんどか聴いたことがあります。それが今回図らずも小ぶりな劇場でハイライト版とは言え、ほぼ重要な場面を網羅した公演を見られたのはほんとにラッキーでした。

世界的にも上演回数がかなり限定的なことが今回よく分かりました。アンナ役を歌える歌手がそもそもいないということでしょう。ほぼ出ずっぱりで、しかも重厚なアリアを歌いっぱなしですから、体力的にも至難ですし、喉への負担もはんぱないと思われます。

今回、それを可能にしたのは大隈智佳子さんの技量と執念でしょう。開巻から終幕まで約2時間、圧倒されまくりましたね。もちろん、脇役陣や合唱、それに弾き続けたピアニストさんがいての快挙でしょう。参りましたねぇ。完全に脱帽です。

やはり今日を待ち続けた熱心なファンや関係者がいて、館内、ほぼ満席でした。たまたま昨年末、アルテ・リーベに行った際に出演されていた今回はペルシー役のテノール内山信吾さんが休憩時間に配布されたチラシを見、さらにその時、端の方に大隈智佳子さんもいらしていて、ツレが大いに興味を持ち、即決したという顛末です。

その時、会場内にいらしたお嬢さん(妹さんの方)が今回可憐な姿で登場されていました。アン・ブーリンの一人娘、後のエリザベス1世役としての大任をよく果たしていました。彼女を出した今回の演出はよかったと思いました。このいたいけな子を1人遺してロンドン塔の処刑台に消えた哀れなアンナをひときわ強く印象付けたと思いました。

以前から存じ上げているエンリーコ8世役のバリトン大塚博章さん、ここでは実に憎々しい人物像を巧みに表現されていました。またアンナに取って代わる微妙な立場、ジョヴァンナを演じた相田麻純さん、初めて聴かせてもありましたが、びっくりするほどよく響く美声で感銘を受けました。

いろんな意味で大変収穫の多い公演でした。