ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「ロープ/戦場の生命線」

180221 A PERFECT DAY(完璧な1日)2015 スペイン106分 製作・脚本・監督:フェルナンド・レオン・デ・アラノア(これが2本目というスペイン人)

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監督より、出演者の顔ぶれを見て行くことにした作品。これだけのビッグネームが揃うんだから、いい作品だろうという読み。だが、はずれた。

舞台はバルカン半島のどこかとしか説明がないが、まあ大体紛争地だから、コソボとかサラエヴォとか、あの辺りという想像はつく。⬆︎が最初のシーンで、大きな井戸を覗き込んでいるのは、AIDS ACROSS BORDERS(主に水と衛生管理を担当する国境なき援助、実在はしないようだ)所属の面々。

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この地域では重要な生活用水である大きな井戸に、死体が投げ込まれて近隣住民が困っているという一報は入り、地雷だらけの山岳地帯を這うようにしてようやくここまでたどり着いて、さっそく作業開始。だが、もう少しというところで、頼みのロープが切れてしまう。周辺を探しても簡単にロープなど見つかりそうもない。

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さて、そこからが長い。英語が達者な地元の子供で、自分ちに確かロープがあるというので、その子を連れて行ってみる。危険だからという理由で子供には近づかせず、隊員が中に入ると、両親が吊るされている現場に出くわす。それでも、なんとかロープは確保できたが、

結局、肥満した男、ずーっと見ずに浸かっているから更に体重を増した巨大な死体がいよいよ片付くと思われた時に、形式主義の国連軍がやってきて、いかなる理由でも、死体を勝手に動かすことはまかりならぬと!無残にも、三度、遺体は井戸の底に落下。

ここ数日、自分たちはなんのためにこんな苦労をしていたのか、隊員には肉体的、精神的疲労感が極限に。そんな中、難民キャンプで、トイレが溢れているから、なんとか処理するようにと本部から指示が。ここで一人が笑いながらつぶやくのがタイトルになっている英語、"A perfect day!"。「完璧な一日ね!」

「ま、雨が降らなきゃ、なんとかなるさ」と返したら、途端に猛然と降り出す。そして、な、なんとあの井戸でも土砂降りで・・・

なんとも皮肉な結末という、まあある種、ブラックユーモアでジ・エンド!

ここら一帯を舞台にして、作られた作品の多いこと。その多くを見ているが、喜劇の味を加えた作品は確かなかったと思うし、その意味で、この作品には上質なテイストが一味加わっているのは間違いない。ただ、これだけの名優をそろえて、意味のない会話がながなが続く場面が中盤にあり、もう一工夫して欲しかった。意欲は買うが、不発だったな。

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あの「ショーシャンクの空に」のティム・ロビンスもすでに60歳。本作では、ちょっととぼけた味のいいおっさんを演じていた。となりの、プエルト・リコ出身の名優、ベニチオ・デル・トーロは51歳、これまで数々の名作に出演、国際的にも知名度の極めて高い俳優の一人。ちょっと変わった風貌で、決して内面を見せることのない、ちょっと不気味な感じがするが、実生活ではどうなのだろう。

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オルガ・キュリレンコには、ちょっともったいないような端役で、よく出演OKしたものと思う。

ついでだが、この邦題は少し大げさ過ぎる。ロープだから、生命線の線に絡ませた意図は分かるが、生命線と言えるほどの問題でもまったくないしね。まあ、「完璧な一日」じゃ、なんのことか分からないのも事実だが。

#12 画像はIMDbから。