ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

久しぶりの本門寺散策

201113 前回はあじさいがそこらじゅうに咲き誇っていたから6月だろう。ということは、ほぼ半年ぶりに来たわけで、秋色がつよくなるわけだ。

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3時半ぐらいだが、もう日はかなり斜めに影を作っている。

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左端の茶色いビルはわがマンション、中央右寄り奥は蒲田駅前の大田区役所。

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Chez Ryuという高級フレンチレストラン。予約客しか取らない。ま、趣味でやっているような店である。娘の成人式の日、ここで大枚をはたいて3人で高級フレンチに高級ワインと洒落込んだが、以来一度も。

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山門。99段を降りてまっすぐすすんで右へ行くと東急池上線池上駅

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明治38年(1905)9月は父親の生まれた時で、日露戦争終結の年。奉納とあるのはいいとして、その下は、左くだり、左くだり?

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納主はわざわざ横浜から。銅や鉄を商っていた中原庄三郎とおっしゃる。今まで、まったく気づかなかった。

「女刑事マーチェラ」@Netflix

201110 Marcella 英 2016~のテレビドラマシリーズ。シーズン3までで、各8話ずつだから、全部で24話。主演、マーチェラ役はアンナ・フリエル。英国TVドラマでは常連らしいが、日本では知名度はほぼゼロ。2017年、国際エミー賞で主演女優賞受賞。確かに演技力には終始圧倒される。

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マーチェラ(なぜかイタリアの名前、Marcellaが付けられているがイギリス人)は、ロンドン北部、エッジウエア・ロードにある分署の刑事で、ゆえあって一旦辞めているが、たまたま在職中に担当していた未解決事件にそっくりの事件が発生し、この機会に復職する。

結構、複雑な家庭環境を抱えており、そのことが原因らしく、時折我を忘れて殊更凶暴になったり、さらに困るのは一時的に記憶をなくすことである。そんな人間が刑事をやること自体、相当無理があるように思うが、実は動物的な勘が働き、上司も周囲もそれゆえ彼女のことを影で重宝がっている。

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離婚したり、上司と浮気したり、子供(一男一女)が学校で問題を起こしたりと、行き着く間もなく事件が起こり続け、かなりえぐいシーンも登場するから、自分も何度か目を背けた。

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シーズン2では壮絶なエンディングを迎え、マーチェラは表向き火事で焼死したことに。その後、舞台は一転、北アイルランドの首都ベルファストへ。別の人間、元刑事ケーラ(Keira)として、ベルファストの組織犯罪へ覆面捜査官として入り込む。ファミリーの次男の愛人となり、⬆︎のように、今回は金髪ショートカットである。さらにヴァージョンアップした活躍を見せ、組織を壊滅させる。シーズン4を作る話はない。

前に見た「LINE OF DUTY」ほどの切れ味はないものの、これもまたぐいぐい引き込まれる作品。

 

「ガルヴェストン」@Amazon Prime

201030 Galveston 米 91分 2019年5月日本公開 割と好きなフランス女優のメラニー・ロランが監督と知って見ることに。まさか彼女が監督業を始めていたことも知らなかったし、それもアメリカ映画とは、二重の驚きである。しかもテレビ映画も含めるとこれが4作目というから。37歳の若さで!!

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殺し屋がボスに裏切られ、偶然現場に囚われていた19歳の娼婦と故郷のテキサス州ガルヴェストンへの逃避行。途中、女の故郷であるオレンジ郡に立ち寄り、妹(実は娘)と言う3歳の子も道連れとなるロードムーヴィー。

よくあるパターンだが、フランス女性が監督するとこんな感じになるのかと思わせるような構図、色調、カメラアングルなど描写が、殺伐とした内容にもかかわらず、印象的で興味深い。

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一緒に逃げてきた女(エル・ファニング)とガルヴェストンの海岸で穏やかに過ごすひと時。

冒頭とラストシーンは、巨大ハリケーンが迫り来るガルヴェストンである。20年の時の隔たりはあるが。男はハリケーン吹きまくる中を、20年前のビーチのシーンを思い描きながら、淡々と歩みを進める。

ガルヴェストンはテキサス州で、メキシコ湾の砂州の上にできた町。19世紀初頭にはテキサス共和国の首都だったこともあるが、ハリケーン常襲地であることから、人口減少で今ではすっかり寂れた町になってしまっているようだ。愚亭にとって昔から馴染みのある名前なのは、映画「ジャイアン」(1956)の主題歌に登場していたことによる。

ついでながら、このように地名だけが映画のタイトルになっている作品は古今数知れず、最近のものだけでも、デトロイトローマメキシコ映画だが)、パリ(凡作)、ベイルートシカゴ(ミュージカル)、古いところではロッコカサブランカ、etc.とキリがない。有名大都市でない方が、作品としては優れている傾向が見られるのが面白い。

「ザ・ストレンジャー」@Netflix

201029 THE STRANGER イギリス映画 2020 1月配信開始。Netflix Original

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彼女(Hannah John-Kamen)こそがストレンジャー

上の副題にもあるように”誰にも秘密がある”というところがポイント。舞台はイングランドの地方都市。地名は特定できず。撮影はマンチェスターおよび郊外で行われたらしい。

主人公、アダム(Richard Armitage  巨大竜巻を描いた"Into the storm"で高校教師役。ヒュー・ジャックマンを思わす風貌)一家は、息子二人と、彼らが通う高校で教師をしている妻との4人暮らし。平凡な一家に次々にもたらされる厄災。そこに絡む謎の女、ザ・ストレンジャー

小気味良い展開なれど、風呂敷を広げすぎた観あり、でしりつぼみで終わってしまうのが惜しい。あれもこれも詰め込みすぎると、やはりちょっとした破綻は免れないね。見せ場はそれなりに用意されていて飽きさせない工夫は買う。

女刑事役に「ダウントン・アビー」で、侍女オブライエンを演じていたシオバン・フィネラーを充てている。他はまったく知らない俳優陣だが、演技は子役も含め立派なもの。全8話だから、見やすい。

「マンハント」@Netflix

201028 Manhunt: Unabomber 2017配信 全8話  米 Netflix Original

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実話に基づいた作品。1978年から20年近くにわたって全米を震撼(おおげさだが)させた爆弾男の話。当然日本でも報道されたのだが、なぜか当時の記憶にはそれほど鮮明に残っておらず、ゆえに本作の展開はかなりのインパクトを感じた。

Unabomberという犯人に対する世間の呼び名は、当初、標的に大学の教授や航空会社が多く含まれていたことから、University & Airlines Bomberとの説明あり。本作もご多分にもれず真実、裏切り、陰謀、愛、失意などが重要なキーワード。

関わった事件は16件、うち死亡3名、負傷11名という結果だから、凶悪犯と言われても仕方ないところだが、実はこの犯人、知能レベルが高く(高校時代に飛び級し、ハーヴァードではクラスメートより2歳若く、そのことが本人を苦しめることにもなる)、また風貌などからも、そういうみなされ方をされず、事件の全貌が知れるにつれ、一部にはむしろ同情的にすら見られるようになっていく展開がスリリングに描かれる。犯人、テッド・カジンスキーを演じるポール・ベタニーが実にうまい!!!

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モンタナ州リンカーン郡の山林に建てた小屋で発見、逮捕されたテッド。

追う側のFBI捜査官ジム・フィッツジェラルド(”フィッツ”)を演じるサム・ワージントンもまた素晴らしい演技を見せる。法言語、比較言語という切り口で、テッドが残した声明文にある言語特性、スペリングミスなどを指摘、長時間をかけた緻密なプロファイリングで、ぐいぐいと核心に迫っていく。

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捜査に没頭するあまり家族をも犠牲にすることになってしまうフィッツ、憂を帯びた表情のサム・ワージントンの演技が光る。

ところが、ジムの上司たちが実に凡庸で、ジムの非凡な才能に気がつかないどころか、それをあらゆく局面で否定するから、見ている側は実にイライラする。それでも、この男、腐ることなくついにホシを挙げる。ちゃっかりこれを自分の手柄にする上司の姿をテレビ画面で見て、さすがのジムも切れる。

犯人が残した声明文、「産業社会とその未来」(Industrial Society and its Future)は、産業革新で便利なものが登場すればするほど、人間は本質的なものを見失い、そうしたものを排除した生活に戻るべきという論旨に、むしろ同調するジムは、収監されたテッドと面談を重ね、彼の説得を試みるが。

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主役二人の名演技もみどころの一つ。

当初、令状の無効性を証明し、それで自分は無罪であると主張するテッドだが、精神異常を理由に無罪にしようとする弁護団と対立、彼らを解雇して自らを弁護するという挙に出る。裁判官はこれを認めず、結局、終身刑が確定、現在も服役中。

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弁護士と対立するテッド・カジンスキー(ポール・ベタニー

前回見たLINE OF DUTYも素晴らしかったが、本作も優れた脚本と主役たちの演技力に支えられた秀作である。