1944年、舞台は第二次世界大戦下のオランダ。ユダヤ人の女性歌手ラヘルは、密かに仕立てたボートで逃亡中、密告で待ち伏せたナチに両親と弟をナチスに殺されてしまう。とっさに水中に逃れた彼女だけ生き延びる。髪をブロンドに染め、名をエリスと変えて抵抗軍のスパイとなり潜入先で親の仇との再会を果たす。
ポール・バーホーベンは知らない監督だが、「氷の微笑」を撮っていたとは。彼が23年ぶりに故国オランダで監督したサスペンスタッチの戦争ドラマ。昨年のオランダ映画祭で作品・監督・主演女優の3部門を受賞したのは当然だろう。それほどパワフルな作品だ。
4ヶ国合作表示だが、実質的にはオランダ映画だ。全編オランダ語と時々ドイツ語という作品も日本公開作品では珍しい。この女優、まことに体当たり演技で、すばらしく魅力的な美形女優だ。劇中で歌を何曲か披露するが、いずれも素晴らしい。勿論本人自身の歌唱。
2時間半とかなりの長編だが、だれることはなく、最後まで眠気を催すことはなかった。開巻直後から見せ場がふんだんで、一体誰がほんとの黒幕か分からないまま、最後に衝撃的な事実が待っている。
尤も冒頭は1956年、イスラエルのキブツで学校の先生を演じるヒロインが出てくるので彼女は運命ははっきりしているのだが。