地域主催の公演としては、毎回結構本格的なものになっている。1991年ごろからやっているらしい。オペラ本公演とオペラアリア・ガラコンサートをほぼ交互に開いて今日に至っている。98年に本格的なホール、アプリコが完成してからは、ここが本拠地に。自分もささやかながら「大田区民オペラを支える会」の一員で、99年からは余程のことがない限り観に行っている。
今回「マクベス」、勿論初めて取り上げる演目だが、林 康子さんが出演することが一つの話題になった公演。現在オントシ67歳で、初挑戦というから凄い。この方、愚亭が勤務していた職場の親しい先輩の従妹筋に当たり、大昔、それこそイタリア留学前から存じ上げている。73年にはロンドンのコベントガーデンでの「ドン・ジョヴァンニ」ドンナ・アンナ役でデビューした時も、たまたま滞在中で観に行ったことがある。知り合いゆえにドキドキ・ハラハラしながら、まだ細身の康子さんを聴いた記憶が鮮やかだ。
そして初挑戦のレイディー・マクベス、ひとの不安をよそに、見事なパフォーマンスだった。中低音域に僅かに安定さを欠く気がしたが(怒られそう)、高音域は全盛期を思わせる発声で、長いフレーズも少しの乱れもなかった。まったくbravissima!!!である。
言っちゃ悪いが、ご主人のGian-Nicola Piriucciは、さすがに姿も喉も枯れた印象で、対照的だった。
タイトル・ロールを演じた折江忠道氏がまた凄かった。もうそれほど若くないと思うのだが、この難しい役どころを巧みなコントロールで演じ切ったのには脱帽である。
若手では、今年2月、芸大での東京芸術大学大学院音楽研究科(修士課程)学位審査会公開演奏会で、カバラドッシを歌って深く印象に残った、マクダフ役又吉秀樹氏が瑞々しい喉を披露。これからが楽しみな逸材の一人だろう。出番は少なかったが、マクベス夫人の侍女をやった岡田昌子さんも印象に残る演技・演奏だった。
賛助出演者も混じっているとは言え、地元の歌好きのオジサン・オバサンで結成している大田区民オペラ合唱団の頑張りも見落としてはならない。
←(監視員の姿がないのを幸い、パチリ。フラッシュなしで、光源がかなり暗めだったのか、まったくピントがあっていない。こちらの慌てぶりを見透かすかのような出来栄えにはがっかりだ)
主要アリアとしては、マクベス夫人が2曲、1幕2場「早く来て、あかりをつけておくれ!」(Vieni t'affretta!)、2幕1場「日の光が薄らいで」(La luce langue)、
主役マクベスが1曲4幕3場「あわれみも、ほまれも、愛も」(Pietà, rispetto)
そして愚亭の一番好きな有名なアリアは4幕1場でマクダフの歌う「ああ、父の手は」(Paterna mano)ということで、主役でありながら、マクベスの聞かせどころが余りないのが寂しい。
それと脇役にテノールを二人配して、二人がユニゾンで歌う場面も結構珍しいのではないかな。
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