ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

英国ロイヤル・オペラハウスによる「メサイア」

f:id:grappatei:20100919085812j:image:leftS先輩のご招待で、NHKホールへ。「メサイア」を聴くのは1年半ぶりかナ。今日は本場のものを聴けて大々満足。うまく言えないけど、嘗て聴いた「メサイア」とは似て非なるもの、という印象。音色も違えば、解釈も違うということか。或いはたまたまこの指揮者(イギリス生まれのイタリア人、アントニオ・パッパーノ)ゆえか。

土曜の午後ということもあったのか、場内は超満員。それに対抗するかのように舞台に上がった人数も凄い。合唱だけで、50人近い大所帯。本場のプロがこれだけ結集したわけだから、合唱の盛り上がりだけでも滅多に聴けシロモノではない。

また、管弦楽団も一つ一つ精緻な音を丹念に紡ぎだすという印象で、この辺りはパッパーノさんの苦心の跡か。弦はほとんどヴィヴラートをかけず、古楽器のような典雅な調べを奏でる。コンバスの弓使いが全員フランス式だったのが面白い。仏独は仲が悪いから、別の弓使いになったのかも知れないが英が仏に加担しているように考えると笑えてしまう。

ソリストは誰ひとり知らないが、略歴を見るといずれも錚々たる顔ぶれであることがよく分かる。
初っ端にソロを歌う韓国人のテノール、滑らかでよく通る美声だ「ウーム、なかなか」と思わせる。やはりどんな曲でもそうだろうが、「入り」は極度に緊張するだろうに、そんなことは微塵も感じさせない。

ついでバス。禿頭長身。楽譜なしでスタート。朗々とつないでいく。そしてボルドーのロングドレスをまとった、遠目にはサッチャーさんを思わせるアルト。大きく太い声に特長が。対照的に襟ぐりを大きく取った白い衣装のソプラノ、ややキャシャな喉に聞こえたのだが、後半徐々に盛り返したのはさすが。

さて、後半有名な「ハレルヤ・コーラス」で一気に頂点へ。この曲は、ロンドン初演(1743年)の時、感激した国王のジョージ2世が思わず立ち上がって聴いたことから、以後の演奏で観衆は立ち上がって聴く習慣になったとかで、周囲にも何人か立ちあがった方が。これをやるには歌舞伎の掛け声と同じで素人にはなかなか。

そして長いエンディングのコーラスがあって、「アーメン」で終了。敬虔なキリスト教信者が少なくなかったのか、「ハレルヤ・コーラス」が終わって、ソプラノのアリアに移行する部分で、目頭を押さえている姿が結構視野に入った。アルトのサッチャーさんも舞台上でそんな仕草(気のせいか)

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