120812
大田区民オペラ協議会では、本格的なオペラ公演とオペラ歌手によるガラ・コンサートを一年おきに開催していて、今年はオペラの番。いつもは秋開催だが、様々な事情で真夏になった。
今回で27回目で、オペラが13回、ヴェルレク1回、他はガラ・コン。アプリコ完成(1999年春)まで11回は下丸子の大田区民プラザで開催。自分が行きだしたのは、99年のガラ・コンから。
なかなかレベルの高い公演だが、他の区民オペラに比べてやや割高なのは何故かよく分からない。
今回の「トゥーランドット」は、これまでの数多の公演の中で、屈指の名公演ではないか。総合的にこんな素晴らしいオペラ公演が区民の力でできることを素直に喜びたい。
ソリストでは、カラフの樋口達哉さん、今日は絶好調だったのではないか。低音も高音も万遍なくビンビン響いていた。リューの大隅智佳子さんも定評のあるソプラノ。清澄な声質に加え、確かな歌唱力は盛んに喝采を浴びていた。
タイトルロールを演じた丸山恵美子さん、私は初めて聞くが、体力的にも消耗する難役をよくこなされたとものと脱帽である。失礼ながら、決してお若いというわけでもないのに、実に立派だった。
更に特筆すべきはピン・ポン・パンが演じる第二幕の場面。幕間にロビーでお会いした坂野早苗さんも褒めておられたが、三人の息がピッタリ合って、それはそれは素晴らしいピン・ポン・パン。力量に差があると、ちょっとした綻びが出やすいところだけに、大いに感じ入った。
今井伸昭氏の演出は、奇をてらわず、手堅い印象で、全体としてうまくまとまっていたと思う。それに舞台装置とコスチュームがまた見事。ここまで本格的にやれば、相当費用が嵩んだことだろう。このチケット代の価格帯はやむを得ないかも知れない。
さて、このオペラも筋書きは単純だが、細部に結構不自然な流れが多く、首を傾げること、しばしば。カラフの名前が夜明けまでに判明しないとトゥーランドット姫の負け。結局、彼女にぞっこんのカラフが自分で明かしてしまって、「あんたの勝ち」って、そんなー。言わばオウンゴールみたいなものだ。
ひたすらカラフをお慕いもうしあげて、彼の父親の面倒まで見ている女奴隷リュー、名前を明かさないと拷問すると脅された挙げ句、衆人環視の中で自害して果てる姿が何とも哀れ。
その代わり、という訳ではないだろうけど、彼女の歌う2曲は、この作品の中でも珠玉のアリアだ。この哀れさは、ドン・ホセに捨てられるミカエラに通じるようなところがあるような気がしてならない。
しかし、こういうことをいちいちあげつらっていてはオペラは楽しめないとも言えるから、我慢、我慢。そう言えば「トロバトーレ」だって、おかしなとおろだらけだし、多分、ひとたびこういうことが気になりだしたら枚挙にいとまがないことだろう。
途中で何度も出て来るメロディーが、嘗て渡邊はま子が歌ってヒットさせた「桑港のチャイナタウン」のそれに酷似、多分元歌が同じなのだろう。名曲解説全集によれば、この旋律は中国の古い民謡、モー・リー・フォアにより、五音音階の印象的なもので、プッチーニが友人から貰ったオルゴールに含まれていた曲とか。なるほど!
ほんとはいけないのだろうが、誰かフラッシュまで焚いてじゃんじゃん撮影しているのに、特にとがめ立てされてないのを横目に慌ててカメラを出して撮影したが、やはり、うまく撮れない。
終演後、出演者の写真を撮ろうと楽屋口に回るがいつになく固いガードで、中へ入ること能わず。長時間の出待ちだと7時からの男子マラソンに間に合わないと思い、引き揚げることに。
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