120916 キネカ大森 イラン映画 120分
旅行に行っていたので、久しぶりに映画館へ。今年60本目の鑑賞作品はイラン映画。「別離」に次ぐ今年2本目の同国作品だが、随分質の高い作品を作り出せる国と、改めて感嘆した次第。
初めに何気なく隠した事実が、のちに途方もない結果につながる心理サスペンス。と言っても、これはカスピ海沿岸の保養地で起きた僅か一日のドラマ。
仲のいい3組の家族が3日間の休暇を共にする。当初予定していた宿舎が使えなくなり、やむを得ず海岸にある、今は使われていない広い別荘で過ごすことに。窓ガラスが割れていたり、内部が汚れいていたりするが、皆で片付け、なんとか住める状態に。
リーダー格は言い出しっぺのセピデー⬆(ゴルシフテ・ファラファニ、ハリウッド作品「ワールド・オブ・ライズ」で地元の看護婦役として印象深い演技を見せた)。最近、離婚したばかりでふさぎ込みがちのアーマドに、自分の娘が通っている保育園の先生、エリを引き合わせようと、半ば強引にエリをこの旅行に誘ったのだった。
実はエリ(⬆右)には婚約者がいるのだが、既に気持ちが離れていると聞いていたので、丁度アーマドの相手にぴったりとセピデーが考えてもおかしくはない。でも、このことは、セピデー以外、一行に誰も知る者はいない。このことが「事件」を取り返しのつかないものにしていく。
そして、海が牙をむき、その「事件」が起きるのだった。
脚本が緻密なのと、ハンディカメラ多用のカメラワークが素晴らしく、その場に居合わせるかのような迫真力を生んで、観る者を飽きさせることがない佳作。
後半は舞台劇のような濃い台詞の激しいやりとりが出演者全員を巻き込んで行く。楽しかるべき休暇が一気に暗転し、それぞれが心の動揺と怒りを厳しくぶつけ合う。どこでも、誰にでも起きそうな展開だけに、息を殺して引き込まれてしまう。
それにしても、イラン人女性というのは、何故かくも美しいのか、新たな発見だ。
#60 画像はALLCINEMA on line