130711 角川シネマ有楽町 原題:A LATE QUARTET 106分 [監]ヤロン・ジルバーマン [出]フィリップ・ホフマン、クリストファー・ウォーケン、キャサリン・キーナー、マーク・イヴァニール
25年もの長きに亘り、共に作り上げて来た妙なる調和が、あることがきっかけで、もろくも崩れさる。それは4人の、単に音楽性の調和だけでなく、人生そのものに対する思考の一致のようなものまでが包含されていたということか。ある日、知らない間に少しずつ心の奥に溜め込んで来た澱のようなものが、一気に吹き上がる。
リーダーであるピーター(ウォーケン)にパーキンソン病の兆候が出る。このことを仲間に告げ、更にこの機会に引退したいことまで。夫婦である第2バイオリンのロバート(ホフマン)と、ヴィオラのジュリエット(キーナー)の間にはすきま風が。更に彼らの娘でバイオリニストのアレックスが、第1バイオリンのダニエルに個人レッスンを受けているうちに妙な関係になるといった具合だ。
数ヶ月後に演奏会を控えての練習中、ついに怒鳴り合いから殴り合いにまで発展、もはや四重奏団の破綻は避けがたいところまで。しかし、今は亡き愛妻と立ち上げたアンサンブルが、このまま消えることに堪え難い苦痛を感じるピーターは、必死で後がまを探し・・・・。
⬆苦悩するリーダー、ピーター(ウォーケン)は、崩壊しかかったフーガ・カルテットを立て直すための秘策を練る。
この後、感動的なエンディングが待っているのだが、どうも全体に上滑り感の漂う作品であるのは、脚本に問題があるような気がしてならない。展開がぎくしゃくしているし、会話が不自然な場面が多すぎる。
それと、一番のネックは、俳優たちの楽器演奏シーンの不出来具合だろう。もう少し特訓できなかったのか、どうもいい加減なまま撮影に臨んだ気配だ。エンド・ロールにそれぞれに俳優に誰それが楽器指導をしたと流れるから、それなりにはやったのだろうが結果がまるで伴っていない。
せめてヴィバラートをしっかりかけるぐらいの演技はしてもらわないと、余りにも嘘っぽ過ぎる。ウォーケンだけは、なんとかサマになっていたように思ったが、他はひどいものだ。
弦楽器では、最近では「おくりびと」のモックンこと本木雅広、「コンサート!」でチャイコフスキーのバイオリン協奏曲を弾いたメラニー・ロラン、ちょっと昔なら「ほんとうのジャクリーヌ・デュプレ」でチェロを実際に弾いてしまったエミリー・ワトソン、更に遡れば「ラプソディー」でやはりチャイコフスキーを弾いたビットリオ・ガスマンなど、彼らがどれほど真に迫った演奏をした(?)か!適当にやられたのでは、作品自体に感情移入が出来なくなる。これは監督の責任だろう。
そう言う訳で、期待が大きかっただけに、チト残念!
⬇映画で演奏されるのはこの曲。ベートーベン弦楽四重奏第14番作品131 演奏はAmerican String Quartet
#53 画像はALLCINEMA on line
蛇足:映画館で、先に入場していた姉にばったり。5月初旬の骨折からまだリハビリ中だが、千葉から都心まで出て来れるようになったのだから大したもの。この作品、見たいとは聞いていたが、まさか会うとは!