ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「百円の恋」

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監督:武正晴、脚本:足立紳、主題歌:クリープハイプ、出演:安藤サクラ新井浩文ほか 113分 いつもガラガラのキネカ大森に行ったら、切符売場前が見たこともないよほどの混雑ぶり。それもその筈、上映後、主演の安藤サクラのトークショーが組まれているではないか。こちとら、全然そんなこと知らずに来たから、整理券は95番!ま、その割にいい席を確保したが。

さてこれは間違いなく佳作!共通する女子ボクシング関連で言えば、「ミリオンダラー・ベイビー」に匹敵する!と言えば、クリント・イーストウッドが気を悪くするかな。いや、それぐらいのインパクトを感じた作品。

のっけにジャージー姿の主人公、一子(いちこ)が、だらしなくはみ出た背中をボリボリ掻きながら、甥っ子とゲームをやる姿が前面に大きく映し出される。もう、この冒頭のシーンにやられるね。そう、前半の一子は徹底的にだらしないのだ。コイツ、おっさんか、と思わせるほどの出来栄え。顔はむくみ、目はどんより、歯は黄ばみ、頭はボサボサ、ゲーム操作以外の動きは鈍く、完全に一家の厄介物。出戻りで、一応自営業を手伝っている姉とは、当然折り合いが悪く、とうとう取っ組み合いまで。そして、母親のすすめで家を出る。⬇︎安アパートに引っ越してみたけど、やることのない一子。

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後半は、親がくれたある程度まとまった金でアパートの一室で自活し始める。差し当たって近所のコンビニに職を得るが、ここも吹き溜まりのようなところで、まったく箸にも棒にもかからないような従業員ばかりだ。たまたま通りがかりにあるボクシング・ジムで知り合った若手ボクサー狩野(新井浩文)と親しくなり、試合を見に行くが、狩野は負け、ボクシングをやめて、どこかへ。

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⬆︎別人のごとく引き締まった表情になった一子。これが安藤サクラそのまま。

何を思ったか一念発起の一子、ジムに入門。トレーニングに明け暮れ、見る見る精悍なボディーに変身し、顔も引き締まってまるで別人である。そして、・・・その日が来る。

安藤サクラはオーディションでこの役を掴んだようだが、これほどぴったりの役者が他にいただろうかと思わせるほどの出来栄え。さすがあの二人の娘である。ついでに、と言っては失礼だが、新井浩文も良い。そして脚本も文句無しに冴えている。

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⬆︎こんな場面、想定してなかったから、とりあえず手持ちのガラケーでパシャリ。こりゃ、早いとこスマホに替えないとね。

終演後、生の安藤サクラが登場して、トークショー。びっくりするほど華奢な姿で、映画の魔術を改めて知らされた思い。尤も、質疑応答で彼女自身吐露していたが、ボクシングシーンを撮るのが相当ハードだったようだ。女子プロボクサーの前で無様な姿は見せられないと、徹底的に身体をいじめたようだ。シャドー・ボクシングも、縄跳びをヒラリー・スワンクよりはるかにうまい。

自分でも驚いたらしいが、撮影は順撮りではないだけに、短時間で体重を増減させることが求められるそうだが、ほぼ監督の要求には応じられたというから、凄い!やはりこの娘(こ)はただ者ではないのだ。それに、天真爛漫で、まことに屈託がないが、それでいて観衆に対する気配りがハンパでないのには、感心しきりであった。こういうのが「育ち」なんだろうな。

#002 画像はALLCINEMA on line, 動画はYouTubeから。