ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「人生スィッチ」

150728 原題:Relatos Salvajes アルゼンチン・スペイン合作 122分 [脚・監]ダミアン・ジフロンブエノスアイレス生まれでまだ40歳!) [製作]ペドロ・アルモドヴァル

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久々に見るアルゼンチン映画。ブラックユーモア満載のオムニバス形式。一話一話、面白いのだが、全体としての印象が薄くなるのはどうしようもない。→ストーリー詳細

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一番面白かったのが⬆︎第3話、この「エンスト」の巻。高級車に乗った男が田舎道で、前をゆくオンボロ車を追い越そうとすると散々蛇行して嫌がらせに遭う。やっと追い抜くチャンスが来て、並走しながら、相手の男に罵声を浴びせる。この後、まさかの展開になるとは!

しばらくしたところで、後輪がパンク。悪態をつきながら、車輪交換の作業。不慣れなため、思わぬ時間の浪費。そこへ、相手の車が。「さっきは悪かったな!」と一応詫びるものの、相手の顔には不敵な笑みが。降りてくると、まず手始めにワイパーを引きちぎり、フロントガラスを思いっきり叩きつけ始める。更に、フロントカバーに乗っかるや、な、なんと大小便を!これで気が済んだのか、自分の車に戻る男。

さて、ここからの見せ場は更にパワーアップ。スティーブン・スピルバーグの監督第1作「激突」(1971)を思い出させる。

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第4話、「ヒーローになるために」も面白かった。ビル解体専門の男、ある日、娘の誕生日パーティーに間に合うようにオフィスを出て、ケーキを買い、家路を急ごうとする。ケーキ屋から出ると、さっき駐車した自分の車が消えている。レッカー移動したと書いた紙を持って、所定の場所に車を引き取りに行くが、怒り心頭ゆえ、窓口で悪態の限りを尽くすが、結局言われた金額を払い、車列に戻るものの、大ラッシュアワーで、家に着いた時は、パーティーは終了。娘と妻には愛想を尽かされるのは当然。

その後、立て続けにレッカー移動された挙句、男の取った行動とは。そう、爆破が専門だけにね。普段から一方的な市のやり口に不満を持っていた市民からは大喝采。

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第6話、「ハッピー・ウェディング」も、日本では起こり得ない、奇想天外な展開で見応えがあった。あるカップルの披露宴での出来事。彼がこっそり元カノを招待していたことがひょんなことで新婦にばれてしまい、そこからの展開が、いくらアルゼンチンでも、まずあり得ないほど。

他の3話も短いなりに、どれも面白く見られた。この邦題もよくできている。人生、ちょっとスィッチを押し間違うととんでもないことになるという事例集のような作品。

この監督、長編ではこれが3作目というから凄いのだ。あのペドロ・アルモドヴァルが製作に名を連ねたほどだから、まあそれだけ信頼されるべき腕前なのだろう。

#58 画像はALLCINEMA on lineから