151222 原題:RAMS (雄羊たち)2015 アイスランド・デンマーク合作 93分 脚本・監督:グリームル・ハゥコーナルソン
またとんでもない作品がアイスランドからやってきた。昨年の「馬々と人間たち」がまだ記憶に新しいが、いろんな点で共通点を持つ作品である。
極北の厳しい大自然の中で、人間たちと共に生きる家畜たちが、むしろ主人公とも言える作品。無表情だが、どこかユーモラスで、それでいて尊厳に満ちた人々が、一緒に生きる家畜たちにそそぐ柔らかな眼ざしが実に素晴らしい。
アイスランドの片田舎に先祖代々、牧羊を生業として暮らすキディーとグミーの兄弟、なぜか隣同士なのに、40年も口をきかないほど仲が悪い。
今回の品評会でも兄、キディーのところの羊が1等賞を取ったから、弟グミーは不機嫌そのもの。ところが、偶然この優勝した羊が弱っているのを発見したグミーが自宅に連れ帰って調べると、羊特有の伝染病にかかっているらしいことが判明。犬にそのことを書いた手紙を咥えさせて、兄に知らせてやるのだが、これを自分が負けた腹いせと捉えたキディーは、なんと逆ギレで、弟に家に発砲するという挙に出るから、大変。
そうこうするうちに、噂が広がり、ついに地元保健所が乗り出してきて、全頭殺処分ということに。親から引き継いだ大事な羊たちを殺されたんでは、もう生きていけない。一計を案じたグミーは、10頭ほどを自宅の地下室でこっそり飼育することして、ほとぼりが冷めるのを待つという作戦。
ところが、監視員がある日、見回り途中で、トイレを貸してくれとグミー宅へ。用を足していると、地下から物音が。しまった、と思ったが、もう遅い。こうなったら、羊をどっかに隠すしかないのだが・・・ここで兄キディーが山へ放って隠すことを提案。吹雪の中、羊を連れて高地を目指すが・・・。
結末は、例によって観客の想像に任されるものの、事件により、40年も絶縁状態だった兄弟が、やっと肉親としての情を取り戻すラストはやはり感動的。
二人ともメタボ体型で、長髪に髭面ときているから、どっちがどっちか、混乱しっぱなし。彼らは皮下脂肪のせいかどうか、裸になってもあまり寒さを感じないのか、いくら雪洞の中とは言え、低体温症にかかっている弟を素っ裸にして兄が抱いて温めるというのは、我々にはちょっとリアリティーに欠けるように見えたが、ま、そんなことはどうでも良いのかも。
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