170325
すでにあまりにも知られるようになった杉原千畝の一生をオペラにした、意欲作。彼の、カウナスにおけるユダヤ人へのヴィザ発給の話が軸になっているのは当然だが、後半は、ユダヤ人たちが艱難辛苦の末、日本に身一つで到着し、地元民に思わぬ歓迎を受ける話や、さらに時代が下って、無事安住の地へ生き延びた本人たちや次の世代の話まで網羅していることには驚かされた。
これだけ長い長い話を2時間半ぐらいにまとめること自体、相当無理があったと思うが、それをオペラにしてしまうことには感動せざるを得ない。幕が開くと、若き日の夫妻が舞台中央に立ち、夫人役の羽山弘子が、静かに「さくらさくら」を歌うところから、始まる。
要所要所に解説が入り、アリア、重唱、そして弦楽のソロパートには、聞き覚えのあるメロディーが挿入されていたり、いつの間にかすっかり舞台に引き摺り込まれていた。
$14 (文中敬称略)