171109
いやはや、とても一度では覚えられない長い名前の展覧会の、ブロガー対象内覧会に当選して昨夜行って来た。内容を正確に伝えるタイトルは必要だが、ここまで長くしちゃうと覚えてくれないので、いささか逆効果かと心配になる。
版画とポスターを展示するけど、何もロートレックに限らないよ、ということと、版画・ポスターもいわゆる街角に貼られる広告媒体という意味合いから脱して立派な芸術作品になった、ということを主張すると、こういう長いタイトルにならざるを得ないのだろう。主催者の苦労が偲ばれる。
いつものように、18時に受付をすませると、自由に見学し、さらに特別な許可により写真撮影ができるのがありがたい。ただし、一点撮りとフラッシュ撮影が禁止なのは当然のこと。その辺は来場者は何度もきている人が多く、心得たもの。
18時半にいつものように、一番広い画室で主催者側が用意したトークショーが始まる。今回の学芸員は野口玲一氏、そしてモデレーターとして、お馴染みのブログ「青い日記帳」主宰の、TAKこと中村剛士氏が登場、軽妙な振りを入れながら、詳しくて面白い解説が30分ほど。
この一番広い画室にはこの種のポスターで最も有名と言っていいロートレックの「ムーラン・ルージュ」が展示してある他、上の画像のように当時のパリの街角を偲ばせる大きな写真パネルが背景として使われ、さらにはこのELDORADOというポスターに描かれている当時のボードビリアン、ブリュアンの歌声が流れるという、なかなか粋な趣向。
当初、単にキャバレーやカフェ・コンセールの宣伝として使われていたこうしたポスター画や版画(木版、石版)だが、やがて純粋にこうした作品を好む愛好家が登場、しばらくは街角に貼られているものを引っ剥がして蒐集していたようだが、徐々に彼ら用に作られるようになり、街角から書斎へという流れが出て来たようだ。
会場の一角に、当時実際に使われていた石版の一つが展示されていた。多くは大理石を用いていて、当然重いし、大きさも限定される。前出のロートレックの「ムーランルージュ」などは、三つに分けて刷られたという説明があり、確かに境界線がそれとなく分かる。
私事ながら、こうした大きなポスター、パリ駐在時代に結構買い集め、帰国後自宅に貼って楽しんでいた時代もあったが、その後、人にあげたり、捨てたり、今は一点も残っていない。
ここでの展示作品の解説の精度、分かりやすさには、毎度感心するが、今回は版画・リトの展示ということで、それに合わせたオシャレなデザインになっている。
アムステルダムのゴッホ美術館からの出展。ゴッホが所蔵していたという浮世絵が数点、展示されていた。こうした作品をゴッホが生前、手元に置いて日々眺めては日本に思いを馳せてたのかと思うと、何かいじらしく感じてしまう。
この展覧会は、来年1月8日まで。単なるロートレックとその時代展でなく、その時代性をたっぷり感じさせる心憎い演出が随所に窺える貴重なもので、美術愛好家は当然として、パリに興味のある人にも必見。