ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「ラ・ボエーム」@曳舟文化センター

180909

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昨年の「夕鶴」に続いて、同じプロダクションのオペラ・シリーズを観に行った。中央仕切り線前、つまり平土間の最後列、13列やや右寄りの26番だが、とても良い席。

オケピットを設けてある劇場ではないから、5列ぐらいはつぶしてオケ・スペースを作っているが、かなり狭く、40人ほどの小編成オケでも、きちきちで、ちょっと気の毒なほど。コンバス、僅かに1丁、チェロも2丁、管楽器もほとんどが1管だが、なぜかトロンボーンだけ2管。

やがてマエストロ入場。まずアフロヘアだけが目に入ったので、???何人かな?と思ってたら、正面を向けば、確かに完全に日本人の顔で、なぜかホッとする。

開幕。まずはマルチェッロの成田博之が歌い始める。この7月、アプリコホールでの椿姫ではジェルモン役で、愚亭もたまたま合唱隊で参加できたので、同じ舞台に立てるという光栄に浴した。今や日本のオペラ界を先頭で牽引するベテラン・バリトンの一人。もう10年ぐらい前から聴いている歌手だ。

ロドルフォの岡本泰寛、軽妙な人柄で、”拍手の伝道師”として、二期会マイスタージンガーのメンバーとして、何度も聴いている。出だしは若干不安を感じたが、時間が経つにつれ、すっかり勢いづいて、なかなかの力量を示した。彼はレッジェーロと思っていたが、普通にリリコで、案外この役には向いていると思った。

前半の難所、CHE GELIDA MANINA、SperanzaのハイCも無難にこなし、左手前方からBravo!が。続いてミミ、SÌ, MI CHIAMANO MIMI、稲見里恵がしっとりと歌い終え、Brava!。どちらも、指揮者によってはほとんど間髪を入れずに次を振り始めることがあるので、Bravoのタイミングが難しく、当方は敢えてリスクは犯さない主義。

演出には、ちょっとどうかなという感じがしたシーンが何ヵ所か。一幕で、突然子供達が上手から登場して食べ物の差し入れが行われる。微笑ましいのだが、ここはパリ下町の屋根裏部屋なんですがね。なにか不自然さを感じてしまった。

ついでだが、三幕で、ロドルフォが歌っている場面で、ミミが立ち聞きするところ。予算の関係もあるのだろうが、なんらかの遮蔽物がないと、あれだけ身をさらけ出して、ロドルフォの視界に完全に入っているのに、だいぶ経ってから気づくというのもねぇ。物陰どころか、街灯の真下だから、夜目にもはっきり見えているのだ。ちょっとした工夫で不自然さは解消できるのに。

今日のソリスト陣、よく頑張られていたし、合唱団、児童合唱団も力演が光る。狭い空間でしのいだオケもあの編成で、よく鳴らしていた。全体にとてもよい公演になっていた。

それから杉 理一監修の字幕、いつもとかなり違った訳になっていた。新しい解釈なのか。とても見やすい、読みやすい字幕表示は評価に値する。

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自分と同じ地元(蒲田)合唱団の団員の姿も。2列目左から3番目。

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主宰者でもあるミミを演じたソプラノ、稲見里恵。ご覧のように大変チャーミングな方。

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着替えは済ましたが、メイクはそのままで、ロビーにお出ましの成田博之(マルチェッロ)。

椿姫で”共演”したことは覚えていてくれた。「久しぶりです」と言われて、ついこの間というのが当方の認識なのだが、彼の場合はその間、あちこちで公演しているから、こういう対応になるんだと妙に納得。

#55 文中敬称略