190319 Utøya, 22 juli ノールウェイ 97分 監督:エリック・ポッペ(ノールウェイ人、「ヒトラーに屈しなかった国王」'16)
割に最近の事件としての記憶があったが、実は東日本大震災と同じ2011年、夏の事件であった。当時、日本でも大々的に報じられていたから、詳細に事件のことは覚えている。
ワンカット撮影という手法、最近では「カメラを止めるな」でも知られているが、特段珍しいものではない。ただ、実際の事件の進行にシンクロさせ、ほぼ同じ時間を追い、ハンド・カメラで撮りっぱなしの手法がどれだけ臨場感を生むかがよくわかる。実際の事件は72分で、本作の上映時間が97分なのは、前後のシーンが含まれることによる。
ウトヤ島とは別の近くの島を撮影場所に選び、生存者から聞き取った真相をできるだけ集めて再構築した完全なるフィクションであることを監督自身、エンドロールの字幕で訴えている。すなわち、事件の被害者や遺族に最大限配慮したものと思われる。
前半は轟く銃声、逃げ惑う若者たちの細かい描写で、息詰まるように見ていたが、後半はさすがに少しだれてくるのは、この手の作品、つまり結果が分かっている事件ゆえ、ある程度はやむを得ないだろう。
映画は、まずオスロ市内の実写シーンで始まる。政府庁舎が爆破されるが、わずか数分でウトヤ島へカメラは移動し、サマーキャンプ場のテント村へ。
労働党青年部主催の恒例のサマーキャンプに参加している若者たちの間には、すでに庁舎爆破のニュースが入ってき始めている。(8年前にすでにアイフォンなどを手にする若者が多いことに驚く。因みに初代アイフォンは2007年発売!)親元からの電話で、オスロでおそろしいことが起きたから、そっちでも気をつけろということだろう。
実際、犯人はまずオスロで事件を起こしてから、ウトヤ島を狙うという周到な計画的犯行に及んだことはのちに犯人自身が自白しているが、ある種陽動作戦で警察をオスロに釘付けにしようという算段だったようだ。
それにしても1時間以上にわたって一人で撃ち続ける犯人の体力もすごいが、その間、ヘリが飛来するわけでなく、警察その他のボートが現れるわけでなく、延々と若者たちは恐怖にさらされ、おののくことに。
銃声は響き続けるが犯人の姿は最後まで見せないというのも、見ている者の恐怖心をあおるに十分だ。終盤、島の海岸側に避難している若者たちを断崖上から狙い撃ちする場面で、初めてぼんやりと犯人らしき人影が映るだけという徹底ぶり。
結末はわかっていても、これだけ画面に惹きつけ続ける手腕は大したものだ。
時あたかも、NZとオランダで市民を犠牲にした銃撃事件が発生、改めて移民問題、ヘイトクライム、白人至上主義などについて考えさせられる作品。
#15 画像はIMDbから