ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「画家と泥棒」@Amazon Prime

230316 Kunstneren og tyven (ノールウェイ語で画家と泥棒)2020 1h46m 監督:ベンヤミン・リー(ノールウェイ人、元ジャーナリスト、後、ドキュメンタリー映画監督)

タイトル通り、画家と泥棒が主役。オスロでの展覧会に出品した画家バルボラの作品が盗まれ、監視カメラから犯人が特定されます。2人組でその一人、ベルティルと面会するバルボラ。好奇心すこぶる旺盛ゆえ、根掘り葉掘りベルティルに盗んだ時の様子を聞きまくるのですが、その時はラリってて、なーんにも覚えてないと言い張るベルティルにますます興味を抱くボルボラ。

こうして、ドキュメンタリーとして始まった撮影ですが、意外な展開にそのままこの2人の姿をひたすら追い求めるカメラ。着地点もなんにも考えず、3年以上撮影を続けて生まれたのがこの作品。衝撃のラストも含め、あまりの展開の面白さに引き込まれまくりました。

ボルボラはチェコ人で、事情があってボーイフレンドとオスロに移住しています。画力というか筆力が凄まじいです。先日見た「燃ゆる女の肖像」でも描くシーンが登場し大いに興味をそそられたばかりですが、本作でも制作中シーンが多く登場し、興味惹かれます。

一方の泥棒、身体中にタトゥーを入れて、見るからに不気味で、こんな男に近づいてバルボラさん、大丈夫かいな、と心配になるのですが、この二人が起こす化学変化がすごいのです。泥棒とは思えぬほど、感受性が強く、初めて自分がモデルとしてボルボラさんが描いてくれた作品を前に、大泣きするんですね。自分をここまで内面を含めて描き切ってくれたことへの感謝と感動の涙ですかね。これにはさすがにバルボラさんも驚きます。また同時に深い思考力・洞察力を持ち哲学的な言い回しもするベルティルにはたびたび彼女も驚きます。なんでこんな男が盗みをするんでしょうかね。この辺にも彼女は惹かれたんでしょう。恋愛感情はありませんが、親密度ははんぱないです。

ドキュメンタリー作品と言えるのかどうかわかりませんが、フィクションでないことだけは、確かでしょう。秀作。