190608
このようなヴェルディの本格オペラを貸しビル7階のちっぽけなホールでやってしまうところに、発想豊かな安藤 敬の真骨頂を見る思い。ちっぽけと言っても、つめこんで100席は取れるというから、先日初めて言った東京駅八重洲口の東京建物八重洲ホールと同程度。
今回はダブルキャストで2回公演。地元合唱団の指導者の一人であるソプラノ、藤永和望が出演する方を躊躇なく選んだ。合唱指導では、全パートをよどみなくリードしてくれて、プロの凄さを改めて思い知らされるが、透明感のある高音域の美声には魅了されっる。今日は4幕の「世の虚しさを知る神」では、彼女の持つ全てを注ぎ込む熱唱。
2016年のロミジュリ以来、オペラからは遠ざかっていたのに、このところ、すっかりオペラづいている。昨年6月23日、同じくLE VOCI公演「魔笛」でパミーナを歌ったし、さらに今年は、この後、8月にサンパール荒川での「仮面舞踏会」のアメリア役が控えている。今度は本公演で、あと2ヶ月しかないのだが、暗譜が間に合わないとか、FB上でつぶやくが、本番にはきちんと間に合わせてくるから凄いのだ。
タイトルロールの谷川佳幸、のっけからいきなり高音域の連続で大変だったと思う。苦しそうな表情はするが、立派な高音の発声はおみごと!フィリッポIIの杉尾真吾、写真では甘っちょろい2枚目だが、すこぶる長身で、この役のためかヒゲを蓄えていて、これがまたよく似合う。剃らないでほしいね。声も顔に似合わず凄みがある。第3幕の「一人寂しく眠ろう」はトリハダもの。
ロドリーゴの倉内健人はKent Krouchと英語表記にすれば、そのまま向こうの舞台に立てそうな予感のある、広々した伸び代ありの有望株。杉尾同様、まだ若いから、こんごどれだけ成長するかほんとに楽しみだ。「私です、カルロ様」は圧巻!
エボリ公女の久利生悦子、恐ろしく存在感に溢れる舞台姿だ。こういう役には打って付けだろう。出番がすくないのが、ちょっと気の毒だった。それでも唯一のと言っていい聞かせどころ「酷い運命」という、やや長めのアリアを情感たっぷりに歌い上げた。
二重唱では断然「我らの胸に友情を」!本作では最も好きな歌唱で、これまで随分いろんな名歌手の組み合わせで聴いている。中でもプラシド・ドミンゴとレオ・ヌッチは最高の名唱だろう。谷川カルロ、倉内ロドリーゴも悪くなかった。
6時開演で、冒頭安藤の挨拶の中で予告されたようだが、9時までという長丁場。かなりカットしたそうだが、それでも本公演並みの長いコンサートになった。
合間に、安藤の短いが、味わい深い解説が入る。これが単なる筋の紹介にとどまらず、当時の政治背景やら裏話まで、テンポよく話してくれて、字幕が出ないだけに、これは大変ありがたいのだ。
左から倉内、杉尾、谷川、藤永、久利
この後、出演者が後ろ手にもっているチラシを出して、番宣が続くこと!
#33 文中敬称略