ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「帰ってきたムッソリーニ」

190924 SONO TORNATO(私は帰ってきた)伊 96分 脚(共)・監督:ルーカ・ミニエーロ

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2015年公開の「帰ってきたヒトラー」のムッソリーニ版。多分、この作品はいずれ出てくると思っていた。全体の流れは舞台をイタリアにして、主人公を現代にタイムスリップしたムッソリーニに置き換えただけ。新味は、さほどなし。

当然だが、人々は単なるそっくりさんだと思い込み、まあ中には本物と信じ込んで、いかに悪逆非道なことをやったか涙ながらに訴えるアウシュビッツ生き残りの老婆も出てくるが、大半は彼を見ると、ふざけて例のファッシスト式敬礼をする。

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初めて見るスマホに興味津々のムッソリーニ

売れない映像作家がたまたま彼の”出現”を、自分で撮影した動画に写り込んだのを見て、一計を案じ、彼を主人公に映画化を目論むものの・・・

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テレビで公開討論をしたり・・・・

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街中でのロケ撮影では、映り込む人々の中にモザイクがかかっていたり、いなかったり。これはいちいち本人たちに確認した結果だろうか。

ドイツではいまだにナチスヒトラーはタブーであり、例の敬礼は法に触れるほど厳格に取り締まられていると聞くが、イタリアにおけるファシストムッソリーニへの扱いはそれほどではないようで、こうした際どい喜劇も、もはや問題視されないのだろう。

それにしても、この作品、かつての独裁者を現代に蘇られせて辛口の現代批判という二番煎じの上、目立った工夫もなく退屈な仕上がりで、本場イタリアではともかく、日本ではあまり受けないだろう。バックには「ラ・トラヴィアータ」から、アンジェラ・ゲオルギューとヴィットリオ・グリゴーロの二重唱「乾杯の歌」が虚しく響いていた。

せっかくムッソリーニを撮るのなら、もう少し似せて欲しかった。この俳優、ただスキンヘッドに派手な帽子と軍服といういでたちだけでなく、本人の癖、例の肩をそびやかして踏ん反り返るとか、目をギョロつかせての得意絶頂の表情など、いくらでもできただろうに。

#57 画像はIMDbから