ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「ペーパーハウス」@Netflix

210223 CASA DE PAPEL (英語タイトル:PAPER HOUSE)原案:アレックス・ピーナ、監督:ヘスス・コルメナール他5名。

すこぶる評判のいいスペイン発の海外ドラマ。好みに合わなければやめるつもりで見始めたら、ぐいぐい引き込まれて、4シーズン、全32話を見てしまった。シーズン5の配信開始が大いに待たれる。

シーズン1でいきなり人気沸騰、ところがシーズン3で、一気に急降下したとか、最後のメーキングで知った。確かに後半、フラッシュバックや、本筋と関係ないどうでもいい話が多くなっているのは事実。それでもシーズン4で盛り返せたのは立派。

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日本公開のスペイン映画はそもそも多くはないし、ハリウッドで活躍するビッグネームでないと日本で知られることはない。従って⬆︎この連中、誰一人として知らないが、すっかり感情移入してしまった。そりゃ30時間ほどの長丁場だから、それも当然。

中央のスーツ姿がプロフェッソール(”教授”)と呼ばれ、司令塔。その手足となる男女は本名でなくそれぞれに付けられた都市名、トーキョー、デンバー(スペ語だからデンベル)、リオ、ナイロビ、パレルモボゴタリスボンマルセイユオスロヘルシンキ、モスクワなどと呼び合う。

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まあ要するに銀行強盗一味なのだが、その辺のケチな強盗とは訳が違う。その作戦の切れ味と世間を味方につけてしまうという巧妙極まるやり口、でも殺人は”ふり”はするが、徹底回避などと、ま、いわゆる義賊ってやつかな。小気味いい展開が随所に見られて、ハラハラ・ドキドキと最後まで翻弄されまくった。

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赤いつなぎにダリのお面をつけ、時には人質にも同じ格好をさせて、警察を翻弄する胸のすくような戦術。仲間の死は耐え難い。とりわけ中心人物の一人、ナイロビが倒された時の悲嘆たるや!

前半ではスペインの造幣局に人質と共に立て篭もり、せっせと輪転機を回して、とてつもない金額の札束を手にし、意気揚々と撤収、そしてそれぞれ地球上の好きなところで優雅に過ごすという、まあしてやったりの展開。

ところが、これだけの人数で、中には派手な生活もやらかせば、”教授”から念を押されていた鉄則、例えば仲間同士での電話禁止など、を守れなくなれば、ボロが出るわけで、一人が拘束・拷問されるから大変、この仲間救出のために再集結。しかも、ついでに堂々と今度はスペイン中央銀行に押し入り、金塊を奪おうという作戦。これを背景に囚われた仲間をついに奪回するが、幹部級に犠牲者も出てしまう。

追う警察との駆け引きがまたゲームのような面白さ。常に優位に立ち続ける”教授”、金塊作戦も犠牲者を出しながらも、一応大成功、メデタシ、メデタシ・・・のはずだったが!

シーズン4の次にメーキングが流れて、さまざま撮影裏話が紹介される。これも興味が尽きない。

作中、イタリアの反戦歌の一つ、オ・ベッラ・チャオ(O Bella Ciao!)が大変効果的に使用されていることにも好感を得た。イブ・モンタンが歌ってヒットしたが、元は北伊ポー川流域の貧しい米農家が辛い日常を歌った暗い歌だが、第2次大戦末期、国内がドイツ軍に席巻された際の抵抗運動-パルティザン(Partigiano)の歌として一気に知られるようになった曰く付きの歌。本作では、強盗団の士気を高めるために要所要所で歌われる。