210604 諦めていた展覧会に会期終了直前に滑り込めました。
あるところから入手した特別鑑賞券を無駄にするところでした。ずーっと「現在閉館中」とホームページに記載があり、緊急事態宣言が延期となったので、本来ならこれでアウトなのですが、都は映画館、美術館・博物館などについての基準を緩めたので、会期の最後の1週間が再開となりました。特別鑑賞券の有効期間は6/4までとなっていて、まさに最終日に滑り込めました。予約制で、11時半の回を確保し、生憎の天気の中、1年半ぶりに新宿へ向かいました。
今回はモンドリアンの油彩画が54点(うち2点は国内の美術館蔵)、同時代の画家の作品が12点(うち5点は椅子などの家具)。収蔵品コーナーでは、ゴッホの「ひまわり」だけが特別の扱いで、他に、セザンヌの「りんごとナプキン」、グランマ・モーゼスの「ケンブリッジ谷」、東郷青児の「望郷」、なぜか私が一番好きなゴーギャンの「アリスカンの並木道」の展示はなし。
かつてはこの左側、損保ジャパン日本興亜ビル(旧安田火災海上本社ビル 1976.4)の42階にあった損保ジャパン日本興亜美術館(旧東郷青児美術館)が、昨年5月に同じ敷地内に新たに6階建の美術館専用ビルを作り、引っ越したのですが、コロナ禍で私には今回が初めての来館です。
以前は、42階まで上る面倒はあったのですが、上がってしまえば鑑賞はワン・フロアで完結していたのが、今は3階から5階までのスリー・フロアが鑑賞スペースとなり、多少不便を感じます。(戻って作品を見直す時など)
雨に濡れたなかなかモダンなアプローチです。
さて、ピート(またはピエト)・モンドリアン(1872-1944)、特に好きな画家ではありません。展覧会では、大体最後の方に近代・現代絵画部門の端の方に登場するような作品という程度の認識でした。そもそもモンドリアンの大規模な回顧展には行った記憶がないので、多分、まとまって作品群が見られたのはこれが初めてのような気がします。
オランダ中部、ユトレヒト近くで生まれ、ゴッホなどと異なり順調に画家の道へと進んだようです。
ゴッホ同様、初期は普通にちょっと暗いタッチの具象画を盛んに制作していたようです。それが突如変化するのが32歳の時の「ニステルローデの納屋」で、後のコンポジションを思わせるような直線でかちっと区切られた農家が登場します。
36歳の作品「二人の肖像」でも、後の何かを暗示するような画風の変化が見られて、この辺り、実に興味深いです。
回顧展ならではの醍醐味とでも言うのでしょうが、画家は誰しも画風が変わっていくのがほとんどで、その間、外界の影響を受容しながら、自分の作品へ投影を試みるわけですね。最初からいきなり抽象という人はまずいないのでしょう。
もっとも、イタリアのジョルジョ・モランディ(1890-1964)のように生涯、静物と風景、それもビンばかり描いていた画家もいますが、普通は具象からスタートして、ピカソのようにものすごい変化を遂げてどの時代でも天才ぶりをいかんなく発揮した特異な才能の持ち主も出たりします。
これなども、突如、色彩が明るくなります。しかも、補色を意識して。なんとも斬新です!ゲーテの補色に関する理論の影響なども見られます。
色の分解理論も当然知っていて、こうした点描画法も実験的に制作に取り入れています。
ル・コルビュジエにも通じるような作品です。
こうしたカチッとした幾何学的な作品、見た目には美しいとは思うが、あまり実用的とは言えません。