ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「ナショナル・ギャラリー 英国の至宝」@AmazonPrime

211214 NATIONAL GALLERY 2015 180分、製作・監督・編集:フレデリック・ワイズマン

この方、現在92歳のアメリカ人。こうしたドキュメンタリーを得意とする映画人です。3ヶ月もかけて撮影したというのですから、その意気込みと体力に喝采です。

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まだ開館前のギャラリー、カメラはあちこちの部屋をサイレントで巡ります。初めて音がするのは、掃除人の掃除機の音。また、ラストはバレエのシーンということで、なかなか印象深い出来栄えです。180分はかなり長尺です。途中、いささかだれる場面も。詩の朗読などは、飛ばしてしまいました。

世界規模で言えば、むしろ小規模となるこの美術館、愚亭ももちろん1964年の初訪問以来、数えきれないほど行っていますが、ここはやはり大英博物館とならんで、イギリス人の崇高な知恵とか精神がそのまんま詰まったようなところの代表格でしょうか。とにかくいまもなお入場料無料というのが驚嘆すべき事実でしょう。文化・芸術に対する国家としての構えがまるで違うんですね。

当然ながら、映画には経営や運営面での苦労ぶりも余すところなく描かれています。よくそこまでカメラが入るのを許したと思えるほど、ここでもその度量の広さがひしひしとこちらに伝わってきます。

他にも学芸員のレベルの高さと数の多さにも驚かされます。さまざまな来場客を想定して、それなりの準備を進め、対象にあった解説を根気よく進めていく学芸員たちの姿に感動を覚えます。

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⬆︎修復作業についても、このように愛好家を招いて、どこにポイントを置いて作業したか、またその過程で驚くべき事実が見つかったことなどについて説明を加える修復専任スタッフ。

今回の撮影がどのように行われたのか分かりませんが、来館客の表情など、至極自然に捉えられているのにも大いに興味を持ちました。普通にカメラを構えて撮影したとは到底思えないほどすべてが自然のままなのです。

さらに、デッサン教室の現場も克明に捉えられていて、モデルとなる女性だけでなく男性も裸のまま登場し、それを余すところなく撮影し、講師と生徒たちとの会話もことこまかに収録されていて、こうした活動まで含めて美術館のあり方、あるべき姿をとらえたワイズマンには、まさに脱帽です!