230801 TUTTA LA VITA DAVANTI 1h56m 監督:パオロ・ヴィルズィ
つい最近見た「乾いたローマ」がいい作品だったので、同じ監督の作品ということで、見ることに。
それにしても、こりゃひどいポスターです。イタリア版も。日本版はさらにひどい!この原題、いいことも悪いこともいろいろあってこその人生ってな意味合いでしょうかね。それでも前へ進もうと!
シチリア出身のマルタ(イザベッラ・ラゴネーゼ)は、もともと教養ある一家の娘で、ローマ大学では哲学専攻。おそれていたように厳しい就職戦線では評価は高くても落ち続け、けっきょく怪しげな器械をうりさばくコールセンターに就職します。周囲は無教養な連中だらけ。だいたい上司も社長もいわくありげです。
それでも食っていくために我慢していますが、もともと才能豊かな彼女、すぐに頭角を現します。熾烈な売り上げ競争にも優勝したりで、たちまち上司や社長からも一目置かれる存在に。仲間からの羨望は嫉妬に。また上司からは警戒されることになっちゃいます。
起こるべくして事件は起こります。当然嫌気がさしたマルタはとっととやめてアカデミックな世界へ再挑戦することに。
日本の就職氷河期と軌を一にした1990年代初頭のローマが舞台です。マルタを演じたラゴネーゼがいいです。ちょっとイタリア人らしくないのですが、それゆえに、この役にはぴったり。
組合からオルグに来る男に、この監督お気に入りのヴァレーリオ・マスタンドレア、上司のダニエラを演じたのは色気たっぷりのサブリーナ・フェリッリ、「彼女と私」(2015)でマルゲリータ・ブイとの共演は強く印象に残っています。
同僚で、娘のベビーシッターとして住み込みをさせてくれたソニアにミカエラ・ラマッツォッティ、「盗まれたカラヴァッジョ」(2018)ではあえて抑えていた妖艶さを本作では全開でした。
2時間とやや長めですが、それを全く感じさせない撮り方は見事でした。現代イタリアの生活感がうまく炙り出されています。