230910 アーリドラーテ歌劇団のヴェルディ公演もすでに9回を数えるというから大したものです。たまたま主催者が私の学校の後輩であると知ったことも手伝って、第6回(2018、ナブッコ)から、連続して観劇しています。もちろん、来年の記念すべき第10回公演「シチリアの晩鐘@新国立中劇場)も行く予定です。
「ルイザ・ミラー」は初見です。ヴェルディ36歳の時の作品といいますから、一応中期の傑作と言っていいと思います。この作品、いかにもヴェルディらしい大掛かりで激しい場面もふんだんに取り入れ、見どころ・聞きどころ満載ですが、意外に公演機会が少ないのが惜しまれます。
超有名アリアが乏しいからかも知れません。ロドルフォ(テノール)が第3幕で歌う「穏やかな夜には」(Quando le sere al placido)が唯一、単独でリサイタルでうたわれることがある程度かと思うのは愚亭の勝手な見立てでして、「もっといいアリア、いっぱいあるわよ!」と叱られそうな気もしますが・・・。
意外だったのは、ずいぶん長いオペラであることです。休憩時間入れてちょうど3時間でしたから、舞台転換のロスタイムを入れて、正味2時間半!冒頭5分強、序曲が演奏されますが、舞台ではダンサーが動きの激しい踊りを披露します。
ざっくり言うと、「ルチア」と「ロミオとジュリエット」に展開がよく似ているというと、これまたなにか言われそうですが、愚亭にはそのように映りました。
上の相関図にもあるように、時代は17−18世紀、舞台はチロルにある公国という設定で、貴族社会と市民社会に属する男女の悲恋で、ロドルフォの父親およびその側近の陰謀により、二人とも毒死してしまいます。
ヴェルディの作品にしては、ミラーという英米の名字が違和感を抱きますが、原作がドイツ人のシラーによる「たくらみと恋」ということなので、敢えてイタリア式にしていないことも想像されます。
出演者、ソリスト陣、よく頑張られました。これだけ長い作品なので、それぞれ出番が多く練習が大変だったと思われます。合唱団もすばらしかったです。こんなに合唱が前面に出てくる歌劇も多くはないと思います。ちなみに、愚亭の合唱仲間が数名、参加されていて、舞台で拝見・拝聴できたのは嬉しい限りでした。
ソリスト陣で、愚亭が一番興味を抱いたのは悪役ヴルムを演じた奥秋大樹さん!ものすごいバスの響きで、こういう喉の方は日本人には少ないと思います。もちろん声だけいいということではなく、歌いっぷりも実に素晴らしかったし、先が楽しみです。ベテラン勢に臆することなく堂々と演じられました。
ベテラン勢では、もちろんタイトル・ロールの鈴木麻里子さん、この歌劇団では常連です。もう言うことはありません。ロドルフォの小貫岩夫さん、出番は多いし、高音ばかりで、お疲れでしたでしょう。ルイザの父親役、大川 博さんは、以前から愚亭が称賛してやまないバリトン!同じく大塚博章さんも以前から何度も聞かせてもらっています。存在感抜群で、今回はかなりの高音までだされていて、驚きました。それにしても、テノール一人に対してバリトン3人というのも珍しいですね。Bravi, bravi, bravi!!!