ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「ナイル殺人事件」@Amazon Prime

240205 DEATH ON THE NILE 2022 米 2h7m 製作(共)・監督:ケネス・ブラナー

あまりにも有名なアガサ・クリスティー原作で、過去何度か映画化されています。これはそのうちの最新作。ブラナーらしく、キャスティングも凝っていますが、原作にはないさまざまな工夫が見られます。それと現地、エジプトでのロケや、3D特撮の映像に大いにそそられます。相当予算も注ぎ込んだようです。

さらにナイル側を航行する豪華客船「カルナック号」の船内の様子などがつぶさに見られ、また途中寄港するアブ・シンベル遺跡の空撮(この場面は4人の米大統領を岩山に掘ったラシュモワ山を舞台にした「北北西に進路をとれ」を思わせます)なども加わり、その点も楽しめます。

冒頭は第1次大戦の塹壕戦で手柄を立てるエルキュール・ポワロが描かれます。顔面に負傷して、以後、傷跡を隠す意図もあり、大袈裟な口髭をたくわえるという展開です。

それから、何十年か後、舞台は一気にエジプトはピラミッドへと。そこからが本筋というわけで、登場人物が多彩なのはオリエント急行殺人事件と同様です。人間関係を把握するのが結構大変です。

今回はナイルを航行する船内での殺人事件ですから、当然犯人はそこにいるわけです。ポワロの勘が冴えますが、インターネット検索もなかった当時、どうやって一人一人のバックグラウンドを調べ上げたか、大いに謎めいています。そういうツッコミどころはいっぱいあるのですが、それはクリスティー作品共通のことで、じっと我慢です。

意外な幕切れとなるのは毎度のことですが、かなりの見せ場が用意されています。ラストは事件から何年後かのロンドンのとあるクラブで、そこにはヒゲを剃り落として、傷跡もなまなましいポアロの姿が。

ブラナーのフランス語訛りの英語がいいです。当然専門家がついて、特訓されたのでしょうが、ごく自然ですばらしい。それはルイーズも同様。扮する女優はスコットランド出身のローズ・レズリーですが、聞いていてフランス人かと思ったほど。逆にジャクリーンを演じるエマ・マッキーはフランス人ですが、完璧な英語でした。この辺りはブラナーのこだわりですかね。