ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「ハートの問題」

180925 QUESTIONE DI CUORE 伊 104分 脚本・監督:フランチェスカ・アルキブージ

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2010年のイタリア映画祭参加作品。全体には、ばかばかしくなるほど喜劇要素たっぷりで、さんざん笑わせておいて、最後にホロリとさせるイタリア映画お得意のパターン。

ローマの下町が舞台。心臓発作でかつぎこまれ集中治療室でたまたま隣同士となった2人、1人はインテリの脚本家、ステレオタイプのイタリア人で、女性を見ればムラムラ、しかもすぐ行動も起こすという困ったおっさんだが、知的センスも人に対する優しさも兼ね備えた、実は魅力たっぷりの人物。最近付き合ってた彼女と別れ、住むあてもない。

もう1人は無学の自動車修理工で、反抗期真っ最中と娘、悪戯盛りの息子、第3子妊娠中の妻、近くには祖母が暮らしているという恵まれた家庭環境。しじゅう喧嘩ばかりしているものの、豊かな家族愛に満ち溢れている。思索的なタイプからは程遠く、あらゆる面でことごとく対照的な2人だが、すっかり意気投合する。

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お互いに悩みは抱えながらも、励まし合うのだが、別れは突然やってくる。

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蛇足だが、昔懐かしいフィアット500が登場する。この車、愚亭もこれで初めて免許を取ったのでよく覚えているが、ギアを低速に入れる場合は、ダブルデクラッチニュートラルで一旦エンジンをふかしてから)でないとギアが入らない。

#73 画像はIMDbから

杉並区民オペラ「椿姫」@セシオン杉並

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7月のアプリコ大ホールでの椿姫に合唱隊の一員として参加した際にご一緒した、その時はドゥフォール男爵役だった東 浩市が、今回はジェルモン役で登場することをフェイスブックで知り、すぐチケットを購入した。新宿文化センターでのコンサート終了後、直ちにセシオン杉並に馳せ参じた。

区民オペラゆえ、低予算で、すべて手作りである。そのためか、演出もヴィオレッタ役の青木素子が兼任、さらに合唱指導も彼女が担当するという離れ業。見事としか言いようがない。

しかもヴィオレッタとしての歌唱もすばらしく、底知れぬ才能を感じた次第。フローラは、日本人離れした美貌といえば、言い過ぎかも知れぬが、歌といい舞台姿といい石橋佳子は絶賛に値する。

アルフレード佐藤 圭、1幕は見事に終えたのだが、2幕でのヴィオレッタとの絡みの中で、多分最高音域を出すところが何箇所かあるのだが、多少不発だったようで、そこさえなければと少々残念だった。

さて、肝心の東 浩市、若い頃は何気なく普通に歌っていたと本人も語っているように、50を超えてからだと、それなりに苦しかったようだ。しかし、この役、かなり難しく、ただ声が出ればいいというわけでなく、アルフレードの父親というからには、それ相当の年恰好が必要であり、その意味では、今の東 浩市の方が、以前よりこの役はうまく歌い且つ演じた筈である。

アプリコの時のやや軽めの役とは大違いで、重要なきかせどころの「プロヴァンス・・・」もあるし、大変だったのはよく分かる。終演後、汗が顔面から滴りおちるのを見て、苦労がよく分かった。

さて、興味を持って聴いた合唱隊だが、人数としてはアプリコ椿姫とほぼ同数の40人ほどだが、いわゆるトラが入らず完全自力で歌ったのは素晴らしいし、ノーカットで、全曲歌ったのも大したもの。ほんとにブラーヴィである。見ていて、かなり場数を踏んだ方が多くいたような印象を受けた。

ついで低予算でもフル編成のオケを入れたのは大英断。我々の時はSTAGEA IIという最新鋭のエレクトーン2台とパーカッションでの伴奏だっただけに、生オケが入ったのはやはり凄いことだ。マエストラの高山美佳のタクトも素晴らしかったし、かっこよかった!きびきびと分かりやすく振っていて、ソリストも合唱隊も歌いやすかったに違いない。

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 舞台奥には紗幕が降りるようになっていて、3幕での合唱隊は紗幕の裏でCARNEVALEを元気よく歌って、なかなか効果的だった。(我々の時は下手舞台裏で歌った)

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一人三役の青木素子。ほんとにほんとにお疲れさんでした!

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フローラの石橋佳子。どうですか、このあでやかなこと!来年、ヴェルレクでご一緒できそうなんで、ご挨拶しておいた。

アンニーナ役の山口恭子だが、プログラムの略歴を見ていて、20年ほど前にグァムに出張した折、現地駐在員のお宅でご一緒した大学の後輩と気づき、終演後挨拶したら、さすがに驚かれていた。こういう偶然の発見は実に楽しい!

#62 文中敬称略

久しぶりに新宿文化センター小ホールへ

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東京メトロポリタン財団スターファーム所属の和田奈美が出演するというので、ひさしぶりにこの会場へ。昔、なんどかここでオペレッタを聞いたことがあるが、あまりの音響の悪さに閉口した記憶があり、いささか戦々恐々で来てみた。

前半の器楽演奏を聴いている限り、特に問題はなさそうで一安心。改修が入ったのかも知れない。そして肝心の和田奈美の声も問題なく、会場の隅々(と言っても広くはない)に響いていた。

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まだまだ新人、当然場数も踏んでいるわけでもないから無理もない。がちがちに緊張しているのが手に取るように分かり、ちょっとかわいそうだった。それでも次第に本来の力量を発揮し始めて、最後の「宝石の歌」では、きちんと盛り返していたので、こちらも一安心。声質は悪くないし、今後テクニックをつけていけば、いい歌手に成長できる予感がある。

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ヘアスタイルをすこし変えて、大人びた雰囲気に。

#61 文中敬称略

オペラ「ルイーズ」@新国立劇場 中劇場

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シャルパンティエのオペラを見るのは初めて。本作についての情報も自分の中ではほぼゼロだったので、名曲全集の解説やらウィキペディアでお勉強してから初台に向かった。

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この作品を見るきっかけは、7月、アプリコホールでの「椿姫」で共演(?)したソプラノが、お二人とも出ていることにつきる。その時のフローラが今回のタイトルロールの菊池美奈ヴィオレッタを演じた工藤志州が今回はイルマ役。

回し舞台を多用し、パリの雰囲気を見事に醸し出すスッキリとモダンな装置にまず目を奪われる。コスチュームはカラースキームが何と言っても素晴らしい。とりわけ主役の衣装の色調の素晴らしさ!

加えて演出が巧みで、観衆をうならせるものがあった。演目が悪いと言っているわけではないが、第1幕は正直、曲も平板で単調、飽きが来るところも少なくなかったところを、演出がカヴァーしたと言うと、やはり言い過ぎかな。

確かに美しい旋律が随所で奏でられたのは事実だが、アリアで、これぞ!というのは、恐らく、ルイーズの歌う「その日から」だけだったような気がした。この難しい歌を菊池美奈が実にうまく聴かせてくれた。

高田正人も、直前まで例のプッチーニ三部作にかかりきりだったから、おそらくぎりぎりのタイミングで稽古に間に合ったと勝手に想像するが、その割にはさすがというか、きっちり間に合わせて、聴衆(特に女性の)を魅了していた。

ただ、ルイーズとの二重唱になると、とりわけ最高音部に差し掛かると、どうしても菊池美奈に押され気味で、もう少しバランスが取れて聞こえてもいいような気がしたが、このあたりはやむを得ないものなのか。

出演者が多数なのもこのオペラの特色、特に女声陣の賑やかさ、豪華さはどうだろう。随分贅沢なキャスティングである。そんな中、イルマ役の工藤志州がとりわけていい味を出していた。

他に出番は多くはないがジェルトリュードの勝倉小百合、エリーズの坂野由美子が目立っていた。

高田正人以外の男声陣では、父親役の米谷毅彦が突出していた。ガタイも声も大きく、ルイーズの、分からず屋の父親にはうってつけの味をだしていた。青地英幸は「朝帰りの男」と妙な役名だが、これが結構おいしい役どろこで、出番が少ない割りには強く印象に残った。

解説書によれば、このオペラ、作曲者自身は音楽小説(Roman musical)というジャンルに属するという意識だったらしい。当時、イタリアのヴェリズモの先輩格で、自然主義オペラとして、ヴェリズモとは一線を画すものとされていたようだ。

オペラにしては、かなり話が理屈っぽく、自由礼賛、パリ賞賛、巴里万歳のようなシーンが多出する。恋人への愛と家族、特に父親への愛との狭間で苦悩するルイーズが描かれるものの、結局は子離れができない情けない父親像が次第に浮き彫りになり、いささかやりきれない思いも。

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中央にタイトルロールの菊池美奈、その右横に高田正人、米谷毅彦、工藤志州、辰巳真理恵

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工藤志州と勝倉小百合

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工藤志州と青地英幸

#60 文中敬称略

カヴァレリア・ルスティカーナ@三越劇場

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この劇場、はるか昔に一度来たことがあるらしい(カミさんの話)だが、まったく記憶にない。そもそもオペラが上演できる劇場なのか半信半疑で会場入り。まあギリギリというところかな。天井が低いのはデパートの中だから仕方ないのだが、やはり音響がどうも気に入らない。内装など、かなり時代がかった、凝った代物で、それなりに工夫された老舗劇場風ではあるが、古典芸能やお笑い向きであることは否めない。

上手にピアノ、ヴァイオリン、チェロという極小編成の楽団が配置されている。舞台はここがシチリアという雰囲気をかなり上手く出せていたと思うが、要するに背景の大パネルにシチリアらしい風景が描かれていて、下手側に聖母像が鎮座している。開演前の曲目解説、丁寧なのはよいが、もう少し短めに願いたい。

のっけにトゥリッドゥがアリアを歌い終わるや、恋敵のアルフィオが現れいきなりナイフでの決闘シーンとなり、あえなくトゥリッドゥは刺されてしまう。なるほど最後の、舞台外でのシーンをここで先に出すというのは、結構斬新な演出で、悪くない。

トゥリッドゥの青栁素晴、アルフィオの大沼 徹、共に極めて練達の歌い手だから、ここで何もコメントするつもりはない。不思議なことに、大沼はこのヴェリズモオペラの典型とも言える作品で、青栁以外のトゥリッドゥと組んだことがないと聞いた。相性がよほどいいのか、単なる偶然か。

初めて聴くサントゥッツァの野間 愛(メゾだが伸びのある高音の魅力)、ローラの徳山奈奈(日本人離れした色の白さ!)ルチアの矢口智恵(低音の凄み)三者三様にうまいのに驚く。これから注目しようと決めた。

合唱隊、男5人、女7人という小規模ながら、よく響くのは個人個人のレベルがすこぶる高いのだろう。(村田耕太郎はつい先日、アドリアーナでも聞いたばかり)

たった三つの楽器ながら、間奏曲なども含め歌組とまったく聴き劣りすることのない演奏ぶり、ブラーヴィ!である。編曲もうまかったしね。

終演後、楽屋を訪れようか迷っていたら、歌手たちがぞろぞろロビーにお出ましになったので、さっそくパチリパチリといつものように。

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おつかれさんでした!終演後だし、このように二人とも実に晴れやかな表情だ!

#59 文中敬称略

劇場に来る前に、別のフロアで開催されていた日本工芸展をすこしばかり覗いたが、以前にも数度来ているが、ため息しかでない逸品揃いで、今更ながら日本の高い工芸技術には恐れ入る。

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今日は雨の中、午前中から出動、美術展内覧会、映画鑑賞、そしてオペラ鑑賞と、初の3本建てで疲労困憊!帰宅後のビールのうまさはまた格別だった!