180922
シャルパンティエのオペラを見るのは初めて。本作についての情報も自分の中ではほぼゼロだったので、名曲全集の解説やらウィキペディアでお勉強してから初台に向かった。
この作品を見るきっかけは、7月、アプリコホールでの「椿姫」で共演(?)したソプラノが、お二人とも出ていることにつきる。その時のフローラが今回のタイトルロールの菊池美奈、ヴィオレッタを演じた工藤志州が今回はイルマ役。
回し舞台を多用し、パリの雰囲気を見事に醸し出すスッキリとモダンな装置にまず目を奪われる。コスチュームはカラースキームが何と言っても素晴らしい。とりわけ主役の衣装の色調の素晴らしさ!
加えて演出が巧みで、観衆をうならせるものがあった。演目が悪いと言っているわけではないが、第1幕は正直、曲も平板で単調、飽きが来るところも少なくなかったところを、演出がカヴァーしたと言うと、やはり言い過ぎかな。
確かに美しい旋律が随所で奏でられたのは事実だが、アリアで、これぞ!というのは、恐らく、ルイーズの歌う「その日から」だけだったような気がした。この難しい歌を菊池美奈が実にうまく聴かせてくれた。
高田正人も、直前まで例のプッチーニ三部作にかかりきりだったから、おそらくぎりぎりのタイミングで稽古に間に合ったと勝手に想像するが、その割にはさすがというか、きっちり間に合わせて、聴衆(特に女性の)を魅了していた。
ただ、ルイーズとの二重唱になると、とりわけ最高音部に差し掛かると、どうしても菊池美奈に押され気味で、もう少しバランスが取れて聞こえてもいいような気がしたが、このあたりはやむを得ないものなのか。
出演者が多数なのもこのオペラの特色、特に女声陣の賑やかさ、豪華さはどうだろう。随分贅沢なキャスティングである。そんな中、イルマ役の工藤志州がとりわけていい味を出していた。
他に出番は多くはないがジェルトリュードの勝倉小百合、エリーズの坂野由美子が目立っていた。
高田正人以外の男声陣では、父親役の米谷毅彦が突出していた。ガタイも声も大きく、ルイーズの、分からず屋の父親にはうってつけの味をだしていた。青地英幸は「朝帰りの男」と妙な役名だが、これが結構おいしい役どろこで、出番が少ない割りには強く印象に残った。
解説書によれば、このオペラ、作曲者自身は音楽小説(Roman musical)というジャンルに属するという意識だったらしい。当時、イタリアのヴェリズモの先輩格で、自然主義オペラとして、ヴェリズモとは一線を画すものとされていたようだ。
オペラにしては、かなり話が理屈っぽく、自由礼賛、パリ賞賛、巴里万歳のようなシーンが多出する。恋人への愛と家族、特に父親への愛との狭間で苦悩するルイーズが描かれるものの、結局は子離れができない情けない父親像が次第に浮き彫りになり、いささかやりきれない思いも。
中央にタイトルロールの菊池美奈、その右横に高田正人、米谷毅彦、工藤志州、辰巳真理恵
工藤志州と勝倉小百合
工藤志州と青地英幸
#60 文中敬称略