ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

久しぶりのN響@サントリーホール

190116 友人に誘われてN響を聴きに行った。

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そう言えばサントリーホールも久しぶりだが、なんかやはりここの雰囲気は落ち着くなぁ。今日は中央列のほぼど真ん中に。

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ペレアスは、いかにもフォーレらしい作品。どこか宗教的な印象を与える箇所が出て来る。

ブリテンシンプル・シンフォニーはタイトル通り、シンプルそのもの。弦楽だけで奏でられ、多少眠気も催させてくれる。サミュエル・バーバーの「弦楽のためのアダージョ」を彷彿とさせる、いい曲である。

シエラザードはこれまでなんども聴いているけど、これほど難しい曲だとは、初めて知らされたような気がする。それをさすがN響と思わせる見事なテクニックで弾ききり、あまりの上手さには脱帽!N響って、やはり独特のサウンドを創り出しているんだということ、再認識。プレイヤーが全員名手揃いだし、中でも管の巧さは圧倒的である。中盤、こ難しくも速いパッセージが繰り返し登場するが、これを木管金管が苦もなく演奏していくさまには、思わずゾクゾクしてしまった。

独奏ヴァイオリン、篠崎史紀は只者じゃない。演奏後、マエストロがなんど握手を求めたことか!

ハープの出番がことさら多い夕べで、若い早川りさこもなんどもソヒエフから拍手を贈られて、照れ臭そうだった。

下手奥に陣取った打楽器奏者の若い女性、ずーっとスタンバイしていたが、最終楽章でやおら立ち上がると手にはタンバリン。その前になんども手元に置いた濡れタオルに指を滑らせ、準備万端。そしておもむろにタンバリンを鳴らし始めると、なんとさまざまな技を次々に繰り出し、P席最前列の女性客など、ずーっとこの奏者を最後まで見っぱなしだったほど。(プログラムの載っていた楽団員名簿で見ると、どうやら黒田英実という方らしい)

#4 文中敬称略

心震えたヴェルレク@ミューザ川崎

190113 滅多に聞けない名演奏!ヴェルレクを生で聴けて、大満足!

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こんな名演奏会が近くのホールで開催されたのに、気づくのが遅れて、やっと買えたチケットはなんと4階席。初めてこんな高い席に陣取った。でも最前列の中央寄りで、聴覚的には問題なし。視覚的にもオペラグラス持参だったので、合唱団員(160名ほど?)の顔も一人一人確認できた。知っている顔はわずかに1名。

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4階から見ると釣り天井がこのように見える。例の東日本大震災時に崩落した華奢でオシャレな吊り天井に変わって、いささかパッとしない天井になったが、これも、しっかり吊っていることがよく分かった。

マチュア合唱団とは言え、オーディションで選ばれた精鋭たちで、驚くなかれ、これだけ長く難解な曲を暗譜で歌ったのだ。全体はほぼ100分で、合唱団が歌っている時間はおおむね75分ほどか。いずれにしても、相当な長丁場である。(これに比べると、第九の合唱部分は約12分、「復活」に至っては8分弱だから、いかにヴェルレクが大変かが分かる)

合唱のことから書き始めたが、たまたま現在、自分もヴェルレクの練習中であるため、どうしても興味は合唱へと向かったのだが、オケも独唱者たちもプロ中のプロであり、驚嘆すべき演奏だった。ソリストの4人のうち、ベースは当初予定のアン・リーが体調不良でジョン・ハオに変更になったが、まったく問題のならない変更。

4人とも素晴らしい歌唱を聴かせてくれたが、中でもソプラノの森谷真理の、何とも表現できない高音の輝きには忘我の境、もちろん清水華澄も勝るとも劣らない技の限りを尽くしてくれ、名手福井 敬オペラなどより、こうした宗教曲の方が上手いと思わせる熱演だった。急遽登場のジョン・ハオ、伸びやかな低音がすーっと耳に入る。

面白かったのは、ソプラノとベースは譜面台に楽譜を置いて、アルトとテノールは手持ちで歌っていたことで、目ている側からだと、譜面台に置いて歌う姿の方が心地よく感じるのは何故だろう。

ロレンツォ・ヴィオッティ、まだ30前というから驚く。現在日本で大活躍中のアンドレア・バッティストーニより更に若いのだ!ローザンヌ生まれのイタリア系スイス人で、親父のマルチェッロも聞こえた指揮者だった。ヴィオッティと聞くと、自分でも演奏したことがある18世紀のヴィオリニスト兼作曲家、ジョヴァンニ・ヴィオッティを思ってしまうが、どうやら関係ないようだ。

冒頭、Requiemの歌い出し、究極のピアニッシモの響きには驚く。ヴィオッティの厳しい要求に応えて、あそこまで絞り込んだ演奏を極めた東響と合唱も見事だ。そして怒りの日の例の激しい導入部の総毛立つような物凄さ、なんでも前日のサントリーホールでの演奏ではバス・ドラムが演奏中に穴が開くというハプニングがあったらしい。

100分、ぶっ通しで演奏者は一様に厳しい時間だったろう。聴く方もそれに応えるかのようにしわぶきひとつ発することなく、あの大空間が徹頭徹尾静寂の中で、この歴史的と呼ぶにはいささか大げさかも知れぬが、名演奏に酔いしれていた。終演して、熱狂的大拍手とブラヴォーが館内をゆるがすまで10秒以上もあったろうか。演奏者も聴衆も、終演を惜しむかのように長い間合いが印象的だった。

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ロレンツォ・ヴィオッティもかなり感動していたことが表情、仕草から伺えた。

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4階席からだと、やはりこの程度の画質になっちゃうなぁ。互いをねぎらうソリスト陣。

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オケメンバー、ソリストたちも合唱団に盛んに拍手を贈っていたのが印象的!

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挨拶で出てきたバンダ。舞台袖で演奏していたらしく、客席のどこにもその姿は確認できなかった。

#3 文中敬称略


 

アプリコ・アフタヌーン・サロン2019

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これだけゴージャスな出演者が並んでいるのに、やはり正月明け、しかも平日の昼間という悪条件ゆえに、客の入りは6割程度。ま、これも主催者は覚悟の上のことだろうが、ちょっと出演者には気の毒だった。

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出演者は馴染みの方々だが、メゾの小野美咲は初めて。ドイツ在住ということなので、無理もないのだが、聞けばソプラノの鷲尾麻衣とは芸大の同級生とか。さすが首席卒業というだけあって、上手い!!

坂下忠弘は、以前聞いた時より全体に丸みを帯びたしっとり柔らかな発声で、かなり高音の出るバリトンコルンゴルト、「死の都」から”ピエロの唄”は絶品。鷲尾麻衣と村上公太はなんども聞いているので、あえてコメント不要。

アンコールは、「メリー・ウィドウ」から有名なワルツ。因みに、伴奏の河野紘子は前回(18.4.17)も登場している。

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サイン会は盛況。

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サイン会の後、全員勢ぞろいで撮影させてもらった。

このシリーズ、前回は昨年の4月で、その時は小林沙羅(ソプラノ)と望月哲也テノール)で「椿姫」のハイライトなどを披露したが、その時も進行を務めた浦久俊彦が、今回も曲目の解説や、出演者へのインタビューをした。一般的には余り知られてないような詳しい裏事情を紹介してれく、大いに楽しめた。

#2 文中敬称略

「恐怖の報酬」

190109 SORCERER (魔術師)1977 米 121分(ディレクターズ・カット)、92分短縮版(米国以外で上映時)今回は待望のノーカット版がやっと日本公開。4Kらしいが、たまたま自分が見た地元上映館では2K上映。

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貴重な日本語ポスター

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仏語版ポスター

言わずと知れた1953年製作のアンリ=ジョルジュ・クルゾーの傑作「恐怖の報酬」のリメイクということになっていて、フリードキン監督も事前にクルゾーから許可を得ているし、エンドロールにも同監督に捧げるという文字が入っている。

だが、オリジナル版とは、かなり変更点が多く、別の作品と称してもいいぐらいだ。山の上の油田の大火災を消すためにニトロが必要となり、それを2台のトラックに分乗する命知らずの素性の知れぬ男たちが賞金目当てに応募して、道中とんでもない困難に出遭いつつ・・・と、そこだけは共通する。

短縮版を公開時にリアルタイムで観ているはずだが、細部はほとんど記憶に残っていない。ということはさほどのインパクトを感じなかっただけでなく、クルーゾ版に比較して余りに不出来で落胆が激しかったということのようだ。

だが、今回、カットされた30分がどれほど重要だったかがよく分かるし、とりわけラストシーンがまるで違う形になっている。短縮版では一応ハッピーエンドだが、120分版では、まるで逆になっている。

なぜこの連中が中米のポルベニール(架空の町)へ流れ着いたかが、前半、メキシコの地方都市→エルサレム→パリ→ニュージャージーのエリザベスという風に場所を変えて描かれている。(クルゾー版では、いっさいこの部分は描かれていない。)

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ポルベニールの町外れ(撮影はドミニカ共和国の某地方都市)

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食い詰めたわけあり4人組

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1番の見せ場、水かさを増した濁流にかかる古い木製の橋を必死に渡ろうとする1号者

一人が車外に出て、誘導するのだが、このまま轢いて行くとばっかり。オリジナル版では爆発でできた窪みに石油がたまり、ゆうどうするシャネル・ヴァネルがつまづき、そのままイブ・モンタンが轢いていくシーンが余りに強烈だったので、つい・・・。

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こちらはもっと危険だった2号者。渡り終えた瞬間、ばらばらになって流される橋

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一難さって、また一難。今度は大木が横たわっている。さあて、どうする・・・?

フリードキンは、当初、マックウイーンを主人公に充てたかったらしいが、マックイーンが嫁さんのアリ・マクグロウと一緒に出演させてほしいという条件を嫌って、この話は流れたとか。その後、クリント・イーストウッドジャック・ニコルソンポール・ニューマンジーン・ハックマンロバート・ミッチャムなど、錚々たるスターと出演交渉するもすべて不調で、ロイ・シェイダーしか残っていなかったというから、いかに難航したかということだろう。

仮に、マックイーンで決まってれば、マルチェロ・マストロヤンニリノ・ヴァンチュラが出る可能性が高かったというだけに、惜しまれる。もしこのキャスティングが成功していれば、興行的にも大成功間違いなしだったろう。

おかげで、ほぼ同時期に封切られた「スター・ウォーズ」に食われて、惨憺たる結果に終わったそうで、あまりにも不運だったというしかない。しかし、本作を最高の作品と高く評価する映画人も少なからず。

ただ、この原題には、やはり首を傾げたくなる。これも敗因の一つではないかしらん。

#2 画像はIMDbから。

「オルケストル・デ・ベル第2回定期演奏会」

190105 今年の初コンサートは、杉並公会堂大ホールで聞くことに。

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ちょうど1年前、ミューザ川崎で第1回定期演奏会を開催、その時は「第九」で、自分も合唱団員の一人で舞台に乗っている。その時の主宰者から、お呼びがかかり、荻窪まで出かけた。今日はポカポカ陽気だ!

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2階のほぼ中央最前列に陣取る。知ってる顔が3人ほど。

とてもバランスが取れ、弦も、管もまったく乱れることなくブラ1までしっかり演奏、思わず「ブラヴォー!」

終演後、主宰者と写真撮ってから、「復活」の初練習会場の森下文化センターへ。

#1