ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「悪人」

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100914 TOHOシネマズ川崎 

8/20以来、久しぶりに映画を観に行った。今メディアをにぎわしている話題作である。
「悪人」というタイトルは極めて平凡だが、洋画邦画を問わず、過去の作品にはないようだ。ちょっと意外。

いわゆる「出会い系サイト」(大嫌いな呼称だが)がきっかけとなった複数の男女間に起きる事件を、
主人公の複雑な家族関係を背景にうまくまとめている作品だ。

原作は読んでいないが、原作者と監督自身が脚本を担当して、練りに練った筋立てを構築しているように見える。従って、流れに大きな無理はないものの、前半、満島ひかる扮するOLが、あの程度のことで深夜の山林で車から蹴落とされたり、救いの手を差し伸べた(つもりはないのだが、結果的に)主人公に散々悪態をついた結果、主人公に扼殺されてしまうという展開はやや不自然。

被害者の父親がつぶやく「その人が幸せになったり、そばにいるだけで嬉しいとか、心温まるとか、そんな関係が今の世の中なさすぎる」というようなセリフこそ、本作品で一番言いたいことだったろう。そしてまた、悪人とは本当は誰のことをを指すのかを問うているようにして終わっている。

そりゃそうだ。幼少時に実母に捨てられ、祖母に母親代わりをしてもらいながら、解体現場でほころまみれに働く日々。大した学歴もなく、楽しみはドライブ(スカイラインGT)とケータイというような日常だもの。ふとしたことで、ふとしたきっかけでこういう道を踏み外す事態になる下地は十分過ぎるほど。

方や紳士服店に勤めながら、妹と住むアパートに帰るだけのじみーな女。妹はそこそこ男関係もあるのに、自分にはなーんにもない。そんな中で出会い系で知り合った男がたまたまこいつだったというのが運の尽きだ。

相手が殺人者と知りつつ逃避行の道連れになるような話って、さして珍しいことではない。最後の舞台を灯台に持って行ったところもやや新味に欠ける気がする。

結局のところ、期待が大きかった分、失望もまた、である。

モントリオール映画祭で賞をとった深津絵里だが、それほどとは思わなかった。寧ろ脇役陣、中でも樹木希林が際立っている。父親役の柄本明も悪くなかった。妻夫木クンはちょっと・・・。

それから逃亡中、とある港の見える食堂で出されたイカの目玉にクローズアップして、殺しの場面にフラッシュバックするシーンはやや姑息な印象を受ける。下手にヒッチコックを真似ているようにしか見えない。


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