ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「鑑定士と顔のない依頼人」

131213 原題:LA MIGLIORE OFFERTA (イタリア語でベスト・オファーのこと)この邦題はひどい。もう一ひねりして欲しかった。余りにもそのまま。

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2013のイタリア映画だが、英語が使用されている、というのも舞台(イギリスのどこかと想定される。ロケはイタリアとチェコが多かったようだが)と出演している俳優を考慮してのことだろう。[監督・脚本]ジュゼッペ・トルナトーレ、[音]エンニオ・モリコーネという、最高の組み合わせ。131分 [出]ジェフリー・ラッシュ、シルヴィア・フークス(オランダ人女優、きれいだが、それだけ)、ジム・スタージェスドナルド・サザーランド

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ベテランのオークショニア、ヴァージルが、ある日、広大な屋敷と財産を相続したクレアと名乗る女性から、その処分につき相談を受けるも、当初はまったく興味も示さず、従って彼女に会おうともしない。しかし、度重なる電話に根負けしてついにその屋敷へ彼女に会いに行く。ところが、いろんな理由をつけて、彼女は来ない。

 

紆余曲折を経て、ついに屋敷内部に入ることに。ただし、彼女とは依然として電話でのやりとりのみ。何度か同じような状況下で、クレアが屋敷内にいることを突き止めたヴァージル、クレアに対する好奇心が一気に高まる。

 

ヴァージルは60歳の今も独身を貫いている、一種変人。オークション一筋と言ってもいい人生。女性に興味がないわけではないが、何故か生身の女性に対する関心が極度に薄い。そして、異常とも言える潔癖性。食事中も手袋をはずさないし、受話器もその都度、ハンカチを当て、素手で持つことはしないという徹底振り。

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当然、ホテルのごとき邸宅も、塵一つ落ちていないほどで、100組を越えるような手袋のコレクション棚⬇の向こうに隠し部屋が一つ⬆。何と、そこには古今の名画、それも女性の肖像画ばかりが壁面一杯に。それも見覚えのあるような名画揃いだ。(撮影時、ホンモノを一時的に美術館から借り出したとか。エンドロールにこれらの名画の情報が一斉に流れる。)

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そんなヴァージルが初めて生身の女に興味を示し、ある日、彼女と財産売却の打ち合わせをした後、邸宅から出て行った振りをして、物陰に潜み、彼女の姿を目撃する。それが彼の運命を大きく変えることになるとも知らず。

 

オークショニアに最早未練はない。一区切りつけて、彼女と幸せな後半生を送ることになる流れだったのに・・・とんでもない結末を用意している辺り、さすがトルナトーレだ。見事で完璧な脚本だろう。

 

オークション・ハウスの部下に、「女と一緒に暮らすって、どんな感じ?」と問う場面。相手の返事は、「オークションと同じでしてね、これがほんとにベスト・オファーだったのかどうか、ずーっと分からないんですよね。

 

また、別の場面で、散々悪事の片棒を担がせてきた旧友のビリー(サザーランド)が、「感情って、美術品と同じで、どれだけオリジナルに近くても、偽物ってことがあるよな。喜び、憎しみ、病い、回復、それに愛だって、偽ということはあるからなぁ、ヴァージルよ」

 

 

#104 画像は、IMdb、及びALLCINEMA on lineから