161209
正直、それほど好きな演目ではないが、久しぶりに本場で活躍するキャストによる舞台を見たくて、早くから予約していた。今日の席は1階平土間前から5列目のやや左寄りというベスト・ポジション。
演奏会形式なりの良さとは、小さくて見えないが、マエストロ・ノットが上に書いている通りで、舞台手前で歌手たちが歌い演技してくれるから、その感覚がたまらない。
今回、改めてつくづく思ったのは、彼らが登場した途端に、「なるほど、これほど違うわい」と感じたことだ。つまり、西欧人と日本人、あるいは東洋人との表現力の違いだろう。目の動き、顔の表情、手の動き、脚の運び、どこを取っても、「ああ、それそれ!」と納得のいく自然なもので、これは日本人の舞台だけ見ているとまるで伝わってこない、まず別種のものだろう。
サー・トーマス・アレン以外、一人として聞いたことがないソリスト陣だが、欧州を中心に活躍中のバリバリの旬な連中らしくて、みなうまかった。とりわけグリエルモ役のマルクス・ウェルバは秀逸。またデスピーナのヴァレンティナ・ファルカスもその美声とチャーミングな舞台姿で、忘れらないキャラクターとなった。そして、さすがサー・トーマス、存在感はまるで別世界!
今回は当初予定から二人もソリストが変更になったが、オリジナルの歌手たちがどの程度のレベルか知らないから、特に不満は感じなかった。
レチタティーヴォは、マエストロ自身が鍵盤に向かい、そこへ時折キャストが絡んできたり、アドリブなのだろうが、そんなところも、日本人による演奏会ではあまり見ることのない光景で、楽しめた。
演奏会形式でも、この8月に見たIL TRVATOREのように、コスチュームは完璧にして、振りはないという方が多いように思うのだが、今回は、設定が現代だから、まあコスチュームと言っても普通の格好。ただ、振りはものすごくあって、あちこち自由に動き回るので、観ている側は、確かにこの方が面白いかも。ケータイを小道具として使いまくっていたのが面白かった。
最後になるが、三澤洋史さん率いる新国立の合唱団の素晴らしさも特筆に値する。歌だけでなく、動きも主要キャスト陣に合わせて、見事なものだった。
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