ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ」

170803 原題:THE FOUNDER  米 115分 監督:ジョン・リー・ハンコック

f:id:grappatei:20170804131219j:plain

世界に先駆けて、飲食の世界でフランチャイズシステムを確立したレジェンド、レイ・クロックの成功譚を映像化。

一時期フランチャイズ・ビジネスに身を置き、キャリアの最後は偶然フランチャイズ協会だったこともあり、この話の概要は知っていたが、想像以上に凄まじい話で、今更ながら、この男の凄さを改めて実感できた。

f:id:grappatei:20170804130421j:plain

映画は、1954年というから、63年も前に遡ったところから始まる。取柄は野望と根気だけの、一見して野暮ったいこの男、ありとあらゆるものの訪問販売を繰り返して、ついにチャンスを掴みとる。

f:id:grappatei:20150601084420j:plain

田舎(カリフォルニア州さん・バーナード)で、これまでになかった画期的な手法で成功しているハンバーガーショップ、マクドナルドに出会ったレイは、直感で、これをフランチャイズで全国展開すれば、絶対儲かると踏む。半信半疑の経営者、マクドナルド兄弟、ディックとマックはレイの得意の弁舌に押し切られる形で契約書を取り交わすが・・・・。

最終的に兄弟の手元に残ったのは合わせて270万ドルの小切手、一方レイが得たものは、全米のフランチャイズ経営権や、すでに手当てしてあった3,000箇所にも及ぶ土地代、マックののれん代など、数千万ドル。

運がなかっただけでなく、先が見通せる洞察力の欠如から、マクドナルド兄弟は、結局、自身のブランドだった筈のマクドナルドの看板を使えなくなったことを知って、その後、兄のマックの方は持病の糖尿病が悪化、失意のうちに亡くなるという、弱肉強食の世界の犠牲者に。

最後にマクドナルド兄弟がレイに尋ねる。「なんでなんだ、なんでこの店がそんなに気に入ったんだ?」と。するとこの名前に輝かしい将来性を感じた、とすかさず。マクドナルドという名前の響き、字面、何もかもが素晴らしいとピンと来たとか。これがもし自分の名前のクロックという、いかにも東欧風の暗い名前では成功は覚束ないとも。ま、要するに一瞬のヒラメキなんだろう。

それにしても、このレイという男の意思の強さと、情に流されない冷酷さを演じ分けたマイケル・キートンが素晴らしい。当初、トム・ハンクスが演じるという話もあったらしいが、他の作品と撮影時期が重なり断念したとか。

f:id:grappatei:20170804133444j:plain

哀れなのは、レイを支えて来たエセル夫人(ローラ・ダーン、ブルースの娘)だ。結局、レイの考えについていけず、一方的に離婚されてしまう。仕事だけでなく、私生活でも、かなり冷酷な男だ。

当時、まだそれほど一般的でなかったフランチャイズという手法は、本部が看板(ブランド)、経営・運営ノウハウ、それにテリトリー権をフランチャイジーに提供し、見返りにロイヤリティー(売上や利益の何パーセント)を受け取る方式で、展開が早いのが特徴。アメリカのようなデカい国にはぴったりの事業手法。日本では、コンビニのほとんどがこの方式。

本作も実話を元にしているから、案の定、先日見たボクサー、ビニーの作品同様、エンドロールで、実写フィルムと登場人物のその後の人生が示される。先に席を立っちゃダメと言ってるのに!

#52 画像はIMDbから