170805
千円でオペラが見られるのだからありがたい!このシリーズ、今年で10年目というのも、すごいことだ。愚亭は昨年に続いて2度目の鑑賞。低予算という制約下で、昨年からまた色々工夫と進化の跡が窺われる。それは演出の違いによるところも大きいのかも知れない。
主要キャストの中では、モノスタトスが含まれていない。もちろん侍女たちの出番もなし。その分、縮小されていて、むしろ小気味が良いような展開だ。というのも、フルバージョンだと、途中、必ずダレる箇所があり、眠気を催すのだが、こういう短縮バージョンで手軽に楽しめるのもあって良いと思う。
今回演出を担当した横山通乃、アフタートークにも登場し、当方の質問にも最後に丁寧に対応してくれた。どっかで見たことのあるお顔と帰路、ずーっと気になっていて、早速帰宅後、インターネットで調べて見たら、果たせるかな、黒柳徹子などと一緒に「ヤン坊、ニン坊、トン坊」や「若い季節」に登場していた、あの横山道代であった。
バリトンの大井哲也は、ずーっとパパゲーノ役と音楽監督としてこのシリーズを牽引している。テノールの布施雅也はつい先日芸大奏楽堂でのモツレクでご一緒させていただいたばかり。このシリーズは5年ぶりとか。タミーノは、彼の声質からしてはまり役。
パミーナの赤池 優は、昨年もこの役を演じているお馴染みのソプラノ。声も素晴らしいが、舞台姿もとてもチャーミング。夜女とパパゲーナのまったく違うキャラを演じ分けた渡邉恵津子にも喝采を送りたい。例の超難度のアリアをほぼ完璧に歌っていた。
ザラストロの島田啓介、声も含め、風貌もピタリと決まっていた。またアフタートークでの質問に対して、自分の留学時代の話も絡めてたっぷりご説明いただき、痛み入った次第。
質問の主旨は、昨今日本語上演が増えている中で、聴衆には親子連れが多い中、あえて原語上演したことに触れて見た。予算の関係だろうが、字幕もないから、日本語でも良かったような気がするというもの。自分自身は原語の方が好きなのだが。
やはり原語の持つ調べを大事にしていることが最大の理由だが、日本語上演の可能性は残しているような口ぶりだった。そして、パパゲーノとパパゲーナが歌う「パ・パ・パの歌」だけは日本語にしたのは、舞台上に子役が多数登場するし、最も子供達に見て欲しい場面だったので、そういう演出にされたようだ。
島田の説明では、ジングシュピール(歌芝居)は庶民のものゆえ、上演する国の言葉でやる意義は大きいという。日本では、オペラが初演された頃は、日本語上演が普通で、後年、原語上演に切り替わったという歴史があると。
またバスーン奏者の喜多無為の挨拶の中でも原語と日本語の違いに触れていただいた。伴奏陣も、使用言語の微妙な違いを感じ取って演奏し分けているそうで、それなりに気を使うとのこと。器楽奏者側にもこんな苦労があることを初めて知った。目から鱗、アフタートークまで残ってセーカイだった。
アフタートークでの質疑、左から布施雅也、大井哲也、横山通乃、赤池優、島田啓介、渡邉恵津子
#40 文中敬称略