180305 THE 15:17 TO PARIS (時間の前にTHEが入っているが、これは15時17分発列車ということだからだろう)94分 米 製作・監督:クリント・イーストウッド
予告編であまりに面白そうで、封切ったらすぐ見に行こうと決めていた作品だったが・・・今回はちょっとばかり期待はずれ。それでも、現在87歳にもなる人がこういうテロ事件を映画化しようとするところが凄いし、尊敬してしまう。
⬆︎パリへ向け疾走する高速列車「タリス号」
別にクリントさんに難癖つけているわけではないけど、そもそも疾走する列車の中にテロリストが潜んでいて、乗客皆殺しを企むが、阻まれて犠牲者ゼロという実際に起きた話(通称「タリス銃乱射事件」)は誰もが知っている事実で、阻んだのがアメリカの屈強の兵士たちということも分かっちゃってれば、あとは実際、どのように阻まれたかというところの興味しかないわけで、その場面はほとんど10分程度で終わってしまう。
映画に仕立てるには、他の要素を加えるしかないけど、これがないから、困って、お手柄の3人組(表彰されたのはもう一人いたが、兵士ではない)の悪ガキだった幼少時代話や、人助けの精神はどこで生まれたか、どうして軍に入ろうとしたのか、あるいは実際にアフガニスタンの戦場での挿話とかを入れる辺りまではいいとして、それでも間に合わないから、あとは観光映画よろしくローマ、ヴェニス、ドイツのどっか、アムステルダムなどで観光を楽しむ姿をだらだらと流すから、さすがにこの辺はダレる。
⬆︎トレビの泉で自撮りする二人
⬆︎ヴェニスでは、知り合ったアメリカの女性と一緒に観光。この辺りはどうでもいいのだがねぇ。
尤も、そこはさすが老練な監督だ。チラッチラッとフラッシュバックのように、列車内の事件の前触れのような画面を入れて、まだかまだかと観客を焦らす。そして、いよいよその日、その列車に彼らが乗り込む場面では、おお、いよいよかと一気に興奮が高まる。
⬆︎「WIFIが使えるファーストクラスへ行こうぜ」と誘うストーン。
さらに、犯人との取っ組み合いの凄まじさは、とても素人とは思えない、これはやはり実際に経験したものでないと演じられない名場面だろう。尤も、ほとんど犯人と戦っていたのはスペンサー・ストーン一人であり、他の二人はサポートで、あまり目立った活躍はなかったように見えた。
最初に異変に気付いたのはストーンだが、ヘッドフォンで音楽を聴いていたので、反応が遅れた。
この作品のポイントの一つは、演じたのが実際にテロリストに立ち向かった本人たちだったということだ。これは監督の大英断で、この辺はさすがと思わせる。当初は、ちゃんとした俳優を用意して、3人組には演技のアドバイスをもらう予定で撮影に入ったところ、なんなら、お前ら自分で自分を演じて見たらどう?ということで、まんまとこれが成功したようだ。確かに自然の演技でうまい!特に一番手柄を立てたストーンという人物はなかなかの存在感を示した。
乗客たちも実際に乗車していた人たちが多数撮影に加わったとか。最後に、当時のオランド大統領がお手柄の4人をエリゼー宮に招いて表彰するところは、実写フィルムを使用しているから、急に映像が粗くなる。もし当初の予定通りハリウッドの俳優を使っていたら、この部分の撮影だけに別途、金と時間がかかったろうと余計な心配をしてしまった。
ということで、まあ80点!ちなみにクリント・イーストウッドの監督作品は36本ぐらいあるらしいが、最も短い作品とか。確かにこれ以上長くはできないもの。ああ、それとこのタイトルは秀逸。今日、見た回の開映時間は15時17分だった。(丸の内ピカデリー)
#18 画像はIMDbから