ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「もし叶うなら」@イタリア映画祭

210514 MAGARI (ならいいんだけど)イタリア、118分、2020, 監督:ジネーヴラ・エルカン

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数年前までは有楽町の朝日ホールでこの時期に開催されていたイタリア映画祭、今年は配信で見られることに。これはむしろありがたいこと。初期は、チケット入手が結構難しく、また会場で延々待たされるような事態もあり、数年前を最後に興味を失っていました。それだけに、この方式、コロナ終演後もむしろ継続して欲しいと思います。

新作は@¥1,500、旧作は@¥900、短編は無料というありがたい料金建も嬉しいですね。例年イタリア映画祭の約一月後に開催されるフランス映画祭の方もこれに倣ってくれないかと思い、検索したら、なんと今年はすでに1月にオンライン開催されていました!あ々!!!当方のアンテナの張り方、大いに問題ありです。

さて、本作、若手女流監督、ジネーヴラ・エルカン(42)の作品ですが、一言で言えば、ほのぼのとした家族愛を扱っています。この方自身、ロンドン生まれのイタリア人ですが、両親はスイス人とフランス系アメリカ人ということで、幼い頃からあまり国籍や民族、言語の意識なく育ったようで、それが本作に色濃く反影されている感じがします。

映画は、これから母親の住むフランスからイタリアに住む父親に会いに行こうとする3人の子供達の旅支度のシーンから始まります。この時点では全員フランス語を話しています。その後、すぐローマ空港に迎えにきた父親カルロ(リッカルド・スカマルチョ)のジープ・チェロキーにがやがやと荷物を積み込むシーンに変わります。ここではごく自然に父親の母国語であるイタリア語で話している子供達。

いったい何しに来たんでしょうかねぇ、気になります。出掛けに母親から念押しされていた言葉、「お父さんに、カナダに移住することと、お腹に子供がいることは絶対に内緒よ!」つまり、この母親には恋人がいて、一家でカナダに行くから、今のうちに父親に挨拶させておこうということのようです。

ところが、この父親ってぇのが、映画の脚本かなんか書いているらしいけど、なんだかチャランポランで、あとで分かるんですが、ちゃんとこちらにも恋人(アルバ・ロルバケール)がいるんですね。なんか白けちゃった子供達。ま、でもせっかく来たんだし、ということで、みんなでローマから近い海辺の街、サバウディアへ。

お父さんは、しきりにタイプライターで脚本らしいことを書いちゃったりしていて、どこまで本気なの?っていう風情。その辺、この役者がうまいんです。スカマルチョの顔って、太い眉、ちょっと垂れ目で浅黒く、イケメンというより、ちゃらい感じで、ちょっと信用ならないけど可愛げがある、いかにもイタリアーノ!結構モテるんです、これが。会話の中で、マルチェロ・マストロヤンニが・・・なんて言ってるので、1994年頃の設定らしいです。Marcelloは1996年に死んでますからね。

せっかく久しぶりに訪ねてきた子供達なんだからもう少し構ってやれないものかと思いますが、ほったらかして、別室で恋人といちゃいちゃしたりして、それを長男であるセブに見られてしまいます。「やってらんねぇよ」とばかり、弟ジャン(これが難病を抱えているらしく、毎日注射をしないといけないのですが、これをお兄ちゃんが健気にこなしています。本当は父親に「打ってあげてね」、と母親の手紙にしたためてあったのですが)と、まだ8歳の妹アルマ(この子役が可愛いし、演技もバツグン。将来美貌の女優になるでしょう)を連れて海岸に遊びに行って、ちょっと大きな若者達と自然に交流が始まります。

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急に訪ねてきた旧友ブルースはアメリカ人。英語とイタリア語とフランス語とごちゃごちゃ。

ま、そのあと、ジャンが事故って入院さわぎ、カルロの愛犬テンコの事故死(ふてくされたセブが父親の車で、飛び出してきたテンコを轢いちゃうんですね)、いろいろスッタモンダがあって、フランスから母親シャルロット(セリーヌ・サレット)も合流、最後は「やっぱ、みんな好き、家族っていいなぁ!」って8歳のアルマの感想で終わるという、まあなんということもないんですが、描き方が一つ一つ監督の並々ならぬ愛情がこもったようで、そこがたまらなくジーンと来るんですかね。

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副題「TUTTI INSIEME」はみんな一緒ということ。