ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「ボテロ展 ふくよかな魔法」@Bunkamura(渋谷)内覧会へ

220517

今回も運よく内覧会にお呼ばれしましたので、渋谷へ出かけました。展覧会の概要はこちらの公式HPを➡︎みどころ

この名前、まったく知りませんでした。でも、画風を一目見て、俄然興味をもちました。なんとも言えない雰囲気のある絵ばかりです。こういう作風の画家って、これまでそれほど見た覚えがありません。ちょっと肉厚に人体を描くのはメキシコのケイロスに似てもなくもないかなと思ったら、24歳の時にメキシコに移住して、その影響は受けたのは事実のようです。

また、彫刻を見ても、フランスのアリスティッド・マヨールの作風との共通点などもあるように感じました。とにかくなんでもぽっちゃり、ふっくら、丸っこくしちゃうんです。ただ、顔などは、目鼻を中央にちっちゃく集中させる傾向があるのと、一貫してどれも喜怒哀楽なしの無表情なんです。そこがまたえもいわれぬ気持ちにさせてくれるようです。

この人、1932年生まれで現在90歳で健在です。生まれは南米コロンビアの、麻薬カルテルでよく名前が出てくるメデジンです。20歳まで過ごしたようですが、その後、前述の通りメキシコに移住したり、ヨーロッパ(マドリッド、パリ、フィレンツェなど)で古今の名画を鑑賞したり模写したりして、次第に自分の作風を確立していったようです。

ちょっと見にくいですが、拡大して見てください。彼の年代記の概要はこうなります。

まるっこくなっていったきっかけはマンドリンを描いていた時にサウンド・ホールをたまたまちっちゃく描いたところ、閃いたらしいです。本人が語る動画が会場で流されていました。

マンドリンの穴を小さく描いたら、楽器が爆発したような感じがしたとか。

冒頭、岡田学芸員から概要説明がありました。この作品は「コロンビアの聖母」。涙が盛大で汗のようにも見えるのも面白いです。手にしているのは青いリンゴ。抱いている坊やは幼児キリストでしょう。手にしているのはコロンビアの国旗です。

17歳の時の作品「泣く女」、既になみなみならぬ才能を感じさせます。

モナリザの横顔 2020

「馬に乗る少女」'61

「庭で迷う少女」'59

「キリスト」2000。この人にかかるとキリスト磔刑もこれ、この通り!
これも体全体に比して足が極端に小さい!

これなども”傑作”です。やはり足がどうしても小さく描かれます。バーレッスン中のバレリーナ 2001年

「結婚したて」2010。一見するとマネの「草上の昼食」みたいにハレンチに見られそうですが、この人の作風では、そんなふうにはまったく感じられないところがボテロ・マジックなんでしょうか。

会場で配布された”すごろく”!これが実にうまく作られていて感心しきりです。


今回、主催者さんの特別のはからいで、どの作品も一点撮りがOKという太っ腹ぶりを見せていただきした。ありがたいです。会期は7月3日までです。日本人にとっても珍しいコロンビア出身画家の大変愉快な作品が70点も揃った貴重な機会、見逃す手はないでしょう。